確かに由依が中学の時に可愛がってた後輩が入社してきたと言ってた
けど、想像していた子と全くキャラが違う

「由依が中学の後輩が入社したとは聞いてたけど、平手さんだとは思わなかった」
「由依さんと私じゃキャラが違いすぎるからですか?」

ツッコミの鋭さに面食らってしまう

「そういうわけじゃ…」

「明るい由依さんに対して、無表情、無テンションな私がどう仲良くなったんだろう?みたい感じですか?」
「そうは言ってない」

「まぁ、面倒見の良い由依の事だから、こんな暗そうな子もちゃんと可愛がってあげたんだろうな?みたいな感じですか?」
「そんなんじゃない…そう思ったわけじゃ…」

だめだ上手い言葉が見つからない

「いいですよ、上手い言葉で慰めようとしてくれなくても。そういうの私は慣れてるんで気にしないでください」

まるで心を読まれてるかの様なストレートパンチが次々に入ってくる

「平手さん、ストレート過ぎる」
「これが私なんで、でも気を悪くさせたならごめんなさい」

そんな無表情で謝られても逆に怖いよ 

「気は悪くしてないけど、ちょっとだけ怖いかな?」
「怖い?私がですか?」

「うん、もう少し表情も言い方も柔らかくしてみるといいかも」
「話し方を変えればいいんですか?」

「それだけがいいわけじゃないけど、言い方や伝え方で相手の捉え方が変わったりするから」

私はこれで失敗して大切な人を失った
平手さんにはそんな失敗をしてほしくない

「渡邉先輩」
「うん?なぁに?」
「それ、教えてくれますか?」
「それ?」

「柔らかい表情や言い方とか、伝え方とか」
「ならそれを新人研修の最初の課題にしようか?」
「はい、お願いします」

新人研修は1年をかけて会社のルールへの理解を深めてもらう為に行う

入社して3年以上経過した社員が新人を面倒見ることになっていて、今年は10人近く入社し、その中の1人を私が担当する
その相手が平手さんだ

社内のルールブックを一緒に目を通す
私が読み上げ、平手さんが聞いている

読み上げながら平手さんを何度か見てみたが、やはりずっと無表情

「ここまでで何かわからないことや質問はある?」
「ルールブックには書いてないのですがそれでもいいですか?」
「うん、いいよ」
「渡邉先輩はなんの病気なんですか?」

「えっ……?」
「ずっと気になって集中できません」

「大した病気じゃないから」
「大した病気じゃないなら逆に話せますよね?」

「平手さんはなんでそんなこと気にするの?私が病気だろうが関係ないよね?」
「関係あります。だから教えて下さい」

「なんで?平手さんに関係あるの?」

しつこく聞くので、私はムッとした感じで応えてしまう

「なんでだかの理由、渡邉先輩にはわかりませんか?」