「プールと海ならどっちがいい?」
「どうした?」
「だーかーらー、プールと海ならどっちがいい?」
「今、仕事中ですよ〜」
同僚の由依の急な発言にも私は冷静に対応する
「理佐、例え仕事中だとしても、私にはこっちの方が大切なんだよ」
「私は仕事の方が大事」
「きっとこの続きを聞いたら理佐だって仕事が手につかなくなるよ」
「由依の事だから、彼女とどっちに行きたいか?とかそんなんでしょ?」
「さすがは私の親友、全てお見通しだね」
「まぁね〜、ほら、早く仕事進めて、定時に上がれなかったらまた天にどやされるよ?」
「それはマズイ」
そう言って由依は大人しく仕事に戻ってくれた
天の効果は強い
天、ありがとう
彼女とプールや海かぁ、羨ましいな…
今の私は一緒に行く相手すらいないから…
私は本気で好きになった人と別れて1年になる
どんなに好きでも、価値観や物の考え方、捉え方が違うとどうしても歪みが出来てしまう
私は相手を思って一生懸命になっても、相手はそれを圧力と感じたり
逆に相手が何も聞かずにいてくれるのを私に興味がないのだと捉えてしまったり
恋愛は片想いなら自分だけの気持ちだけだけど、恋人になると相手の気持ちも加わるから、とても難しくて、複雑になってしまう
お互いの欠点や食い違う価値観も、それぞれ歩みよれるような仲になれていたら…
私達はまだ続いていたのかな?
「理佐、理佐、理佐!」
何度も呼ばれて我に返る
「は、はいっ」
思わず声が裏返る
「理佐、平手さんさっきからずっと、ずっと理佐を待ってるよ?」
由依の指差す方を見ると平手さんが会釈してきた
何かあったっけ…?
まず平手さんって…誰だっけ?
予定表を確認する…
今日の予定は…新人研修…平手友梨奈…
「あっ!今日から新人研修だ」