0からのメッセージ 2007/08/11(土)オンエア
ストーリー レイラー
【作:れーら】
―――― 執着心 ――――――
梅雨もあけて、真夏日が続く暑さの只中。
夜になっても、地上の熱は納まりそうも無い。
「ここは別世界ね」
都会はヒートアイランド現象で益々高温になるという。
それなのにこの部屋は、体温を感じさせないほど暗くて冷たい。
冷蔵庫からよく冷えたビールを取り出しながら彼女は、
ソファにもたれた彼を、一瞥した、いや、愛しく(いとおしく)見つめた。
【 ◆ ヒートアイランド現象 ◆ 人間活動の活発な都市部で「島状」に気温の高い部分ができる現象。19世紀から 国 内外で確認されている。緑地や水面が減り、コンクリートやアスファルトが増える と地表面が高温になり、気温が上昇する。気温が上がると、冷房などの需要が増し、 その排熱が気温を一層上昇させる。こうした悪循環がヒートアイランドをさらに深刻 化 させている。】
「さて」 彼女は彼との過去を、大切なアルバムの中から写真を一枚づつ取り出すように 思い返していた。
「貴方と私の出会いは、劇的だったわね」
「あれは私が勤務中の会社から、支社に書類を届ける途中、貴方の車が私の 横をすり抜けた時・・・」
狭い道で車の窓を開けたまま運転していたあなたに
私の声が聞こえてしまっ たのよね。
だって珍しい車だったのだもの。
その車は、ミニクラブマン、クーパーはよく見かけるがクラブマンは珍しく彼女は 思わず
「あ。かわいい」と声にしてしまったのだった。
それを、聞きつけた貴方はしつこいまでに、乗らないかと誘ったのよね。
「ばかね、初対面で乗車するわけ無いでしょ」
会社の、近くだったので貴方は次の日も、また次の日も同じ場所で待っていて。
それから、どう調べたのか、会社の私の部署に連絡してきて
半ば迷惑だったから相手にしたようなものよ。
でもあとから貴方は「あれは、君からの逆ナンだ」って。
貴方と、車はとても素敵だったわよ。
車の方がちょっとカッコよかったかな。
ミニのレースにも、度々出場してたわね。
優勝トロフィーも、一番に私に持たせてくれて。
あなたは、地方都市の駅前の広い土地のオーナーの跡取り。
レースに出るのも 将来も、全て家の力で生きていた。
私たちはあらゆる遊びを享受して、充実していたかのように思えた。
大きな国道沿いの貴方の部屋は、とても快適で3ケ月に1回はへやの模様替えもしてい た。
大型犬を飼い部屋にも入れて、オードブルをよくつまみ食いされたわ。
そうそう部屋には昔のオートバイも飾っていたわね。
私が「外に出して走らせよう」というと、庭に出して2人ではしゃいでいたわね。
春は、貴方の家の門の所にある大きな桜の木の下で、缶ビールを派手に開けながら 大騒ぎ
夏の日は、夜でも思い立ったら海まで車を走らせ、ヘッドライトにうかぶ打ち寄せる波を 飽きもせず眺めて。
秋の日は、キレイな紅葉で有名な山まで行って、記念写真もたくさん残っているわ ね。
冬の日は・・・
そこで・・・、
乱暴にドアがあけれらた。
「死後1週間くらいか、このままの状態で一体なにをしていたんだ」
家族からの通報で駆けつけた、警察官数人。
そう、貴方はもうこの世に存在していなかったのね、
こんなにつめたい部屋で。
警察官が続けて言う「仏は男と女の二体だな」
――――――執着心―――――――――― July 20, 2002 11:48 PM
5年前の作品。
0からのメッセージ~アメブロの前のHPの中から。
(今は公開しておりませんので)
涼しくなりましたか?