https://www.at-s.com/sp/news/article/national/1333091.html 


シーラは、6歳の時、3歳の男の子を拉致して、木に縛り付けるとその子を燃やそうとして火をつけ重症を負わせる、という事件を起こします。

彼女の境遇は、悲惨という言葉では言い尽くせないほど、酷いものでした。

よく、生きてるな、というレベルです。

彼女は、トリイの教室に入れられると、部屋にあった水槽の中の金魚を一匹づつ捕まえては、その目をくりぬくという所業をやってのけます。

人間の子どもというよりも、獣の子どものようです。

しかし、トリイの粘りとおおらかさと知恵とで、シーラは少しずつ人間らしくなっていきます。

ある日、シーラは顔色も悪く元気のない様子で登校してきました。

トリイがどうしたのかと彼女を見ると、下腹あたりに血が滲んでいます。

驚いてシーラにどうしたのか、と聞くと、彼女はこう答えました。

「おじちゃんが、自分のが入らないのは私のアソコが狭いからだって、ナイフで広げたの」

おじちゃんとは、彼女の父親の弟で、彼は自分のいきり立った陰茎がシーラの中に入らないと憤って、ナイフで刺したのです。

シーラはこの傷が元で子どもを生めない身体になりました。

本では、もっと残酷な描写が書かれていて、読むのを躊躇うほどです。

シーラと過ごせた時間は、確か一年かそこらだったと思います。

彼女はIQが170もある子どもでした。いえ、違いました。182です。

思春期には、別の先生からシェイクスピアの本をプレゼントされると研究者並みの理解力を示して、トリイを驚かせます。

彼女は、本を読むことを、こんな趣旨の表現をします。

「本を読んでいると、あの天井まで飛んで行って、そこから飛び出して世界を見ているような気持ちになるの」

出会いは大切なんだ、とこの本を読んでいて、痛感します。

現実には、そんな出会いがなくても、私は本を通してトリイという人に出会うことが出来ました。

出会いは、現在生きている人とは限りません。

本は、時間や国や時代や性別を超えて、出会いを実現できる唯一のアイテムです。




それまで何の接点もなかった人によって、ある日突然、命を奪われる、それも、理由も分からずに、唐突に。

生い立ちの影響は否定できませんが、その理不尽さを説明できる人がいるでしょうか。

その悲惨さが言い訳になるでしょうか。



シーラが重症を負わせた3歳の男の子は、その後どうなったのでしょうか。

6歳なら、恐らく、覚えているはずです。

負の連鎖という鎖から解き放たれる時が、いつか来るのでしょうか・・・