クルーゼとデュランダル | 0fkwのブログ

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先の「ヤキン自爆の裏側で」において、私はラウ・ル・クルーゼをヤキン自爆事件の首謀者であると書いた。

しかし、ここまでの状況を鑑みるならば、ヤキン自爆の計画を立てたのは間違いなくデュランダルである。
クルーゼはその計画を利用して、人類抹殺を狙ったにすぎない。
このクルーゼとデュランダルの違い、言うならば二人の相違はどこから始まったのか?

そのためには、繰り返しになるがデュランダルの立てた計画を見直してみよう。

オペレーション・スピットブレイクの情報を連合側に流す。
言うまでもないが、この事件最大の容疑者はデュランダルである。
シーゲル・クラインは、この作戦の目的がアラスカだと知りえなかった。
それはクルーゼも同じである。知りもしない情報を連合に流すことはできない。
しかしクルーゼは作戦決行時には、既に「ここでなにが行われるか」を知っていた。
だから敵地内部に易々と侵入でき、サイクロプス起動前に悠々とフレイを連れて脱出しているのだ。

パトリック・ザラをたきつけてシーゲル・クラインを抹殺
シーゲル・クライン死亡により、プラント側の穏健派は宙に浮く形になる。
デュランダルの狙いは浮いた「穏健派=シーゲル派」を取り込むことであろう。
ヤキン自爆と同時にクーデターを起こしたプラント穏健派、その基礎はここから始まるのである。

ジェネシス発射と同時にヤキン自爆、さらに最高評議会を掌握
ジェネシスを地球に向けて照準ロックすると同時に、ヤキン・ドゥーエが自爆する。
それにタイミングを合わせて、旧シーゲル派の蜂起・プラント最高評議会掌握
さらに、電撃的な地球連合との休戦協定

これだけのことを、根回し無しで行うなど絶対に不可能。
ならば、最初からデュランダルによって仕組まれていたと考えるのが妥当である。

しかし、劇中でデュランダルがコントロールしきれていなかった要因が2つある。
ひとつは、ラクス・クライン率いる『三隻同盟』
これはある意味仕方ないことである。デュランダルの立場で彼らの行動を掌握することなど不可能である。

問題はもうひとつの方である。
地球連合軍が『NJキャンセラー技術』を手に入れ、
核ミサイルを使用できるようになったことだ。


おそらく彼の計画はこのようなものであったはずである。
・地球にジェネシスを撃つと同時にヤキンが自爆する。
・そのタイミングで一斉蜂起して議会を掌握、パトリック・ザラ議長を解任する。
・打撃を受けた地球側と有利な条件で和平を締結する。

この計画に『地球の核』は入っていないはずである。
下手に地球に反撃手段が残っていると、プラントそのものが脅威に晒される。
ザフトが地球に壊滅的な打撃を与えてしまえば、核ミサイルで反撃される可能性もまた然りである。
そういう意味では、ピースメーカー隊を全滅させ、ジェネシス発射を防いだ三隻同盟は、

図らずもプラントを救ったということになる。

『核』を紛れ込ませたのは誰か?
我々はその真相を知っている。


ラウ・ル・クルーゼである。

フレイ・アルスターを連絡役に使う(フレイ本人すら、その自覚無しに)という

大胆不敵な方法で地球連合にNJキャンセラー技術を伝えたのは、劇中でも語られている。
だが、この方法はあまりにもリスクが高い。
フレイを乗せたポッドが撃墜される可能性も、

アークエンジェルにフレイが回収される可能性も充分にあった。
では、なぜ彼は、そのような不確かな方法を取ったか?

万が一にもデュランダルに知られるわけにはいかないからだ。

アラスカで、クルーゼは「アズラエルの情報は確かなようだな」と呟いている。
この台詞は、クルーゼとアズラエルのつながりを感じさせている。
だが、クルーゼとアズラエルにパイプがあるのなら、

なぜ彼はそれを使用してNJキャンセラーの情報をやり取りしなかったのか?
おそらくこれは、その情報網はデュランダルのものだからだ!
オペレーション・スピットブレイクの情報漏洩や、後の電撃的な休戦条約締結など、

デュランダル勢力が連合内部、それもかなり奥深い位置に情報網をしいているのは確実である。
もしかしたら、ロゴス内部にすら手が入っている可能性すら存在する。
そんな中、デュランダルに知られることなく、

連合にNJキャンセラー技術を渡す方法は、あれしかなかったのだろう。

ここまで書けばおわかりであろう。
クルーゼはデュランダルの計画を利用して「人類抹殺」という目的を果たそうとしたのだ。
「人類抹殺」「デュランダルへの反抗」という『門』を開ける『鍵』としてフレイを選んだのである。

デュランダルとクルーゼが旧知の間柄であったのは間違いない。
そして、デュランダルの計画にクルーゼが一枚噛んでたのも確実である。
(もしかしたら、パトリック側近としてデュランダルに情報を流していたのかもしれない。)
少なくともクルーゼはデュランダルから計画の全貌と詳細な情報を得ていた。

そう考えなければ辻褄が合わないことが多すぎる。
 

問題は、いつ、そして何故、クルーゼがデュランダルを裏切ることになったのかだ。
 

この謎を解くためにクルーゼの行動を追ってみたい。

物語前半は、比較的まともな指揮官だったラウ・ル・クルーゼ。
謎の行動が目立ち始めたのはアラスカでフレイを拉致してからのことになる。
だが、拉致を除けば、このときのクルーゼの行動は、あくまでデュランダルの計画

「アラスカ降下を逆用して連合がサイクロプスを仕掛けた」というのを確かめたにすぎない。

次に彼が登場するのは、メンデルコロニー戦である。
このとき、フレイを利用して「NJキャンセラー技術」を連合に伝えようとした。
それと同時に、このとき彼の精神は、かなり不安定な状態にあったといえる。
フラガに対して「君に討たれるならとも思ったが」と発言しているのが、その証拠である。

ヤキン戦での彼は、メンデルで見せた悩みから完全に解き放たれている。
少なくとも、迷いがあるようには見えない。
自分の計画がうまくいき、腹をくくったのか、

それともデュランダルを出し抜けたことに喜んでいるのか。
キラやフラガに自分の価値観を嬉々として語り続けている。

ここで判るのは、クルーゼが行動を開始したタイミングである。
アラスカでフレイを連れ帰った時点で、彼の頭の中にはシナリオが浮かんでいた。
実際に行動したのはメンデル、その時点で、彼はデュランダルを裏切るのにかなりの抵抗がある。


アラスカとメンデルの間で、クルーゼとデュランダルに何かあった。
その可能性が一番高い。


スピットブレイクとメンデル戦の間には2ヶ月ほどの時間があり、

クルーゼも一度プラントに帰還している。

この間に、彼がデュランダルと接触していても何のふしぎもない。
そのときに、おそらくこの二人の間で何かが起きたのだ。

ひとつの要因は、間違いなく「キラ・ヤマト」である。
そもそもクルーゼはどこで

「キラ・ヤマト=フリーダムのパイロット=ヒビキ博士の人工子宮から生まれたコーディネーター」を知ったのか。
『ストライクのパイロット=キラ・ヤマト』はアスランから報告を受けている。
アスランがフリーダムと合流した時点で、『フリーダムのパイロット=キラ・ヤマト』はある程度推測できる。
だが、キラの出生の秘密は本人すら知らなかった秘中の秘である。
なぜ、クルーゼが知っていたのか。

デュランダルが調べ上げたとしか思えないのである。
キラの出生の秘密をザフトで知っていた人物はクルーゼ・デュランダル・レイの3人だけでしかない。
アスランの報告を受けたクルーゼが、

ストライクのパイロットのあまりの戦闘能力に疑問を抱き、

デュランダルに相談したのではないだろうか。
デュランダルはメンデルで働いていた遺伝子学者であり、

おそらくヒビキ博士の人工子宮の話も知っていたはずだ。
公式には消された、その後の子供の足取りもある程度知っていても不思議ではない。
そして、「キラ・ヤマト」に繋がったのだろう。

これならば、忙しく前線に張り付いていたクルーゼがキラの出生の秘密を知っていても問題はない。

そして、クローンとして生まれた自分の忌まわしき出生の原因ともなった

ヒビキ博士の人工子宮から生み出されたキラが生きていると知ったとき、

かつて自分のオリジナルを殺して終了したはずの「復讐の炎」が再び首をもちあげたのだろう。

しかし、それだけでは「人類抹殺」という彼の願望には、まだ少し距離がある。
彼はキラ・ヤマトを倒す千載一遇のチャンスを見逃して、自分の目的を取っているのだ。
クルーゼの行動は『デュランダルが作った計画を、彼に知られずに逆手に取る』ものだった。
それは、クルーゼの復讐の相手がデュランダルにも及んでいる可能性が高いということになる。

デュランダルがクルーゼを絶望させる何か…
それが、彼を「人類抹殺計画」の背中を押した。
こんな可能性も考えうるのではないか。


「それ」とは何か?
デュランダルは何をしようとしていたのか?

デュランダルの計画は劇中で語られている。

『デスティニー・プラン』である。

・人類全てを遺伝子登録して、その診断結果により職業を斡旋
・他国の軍事分野は基本的に解体
・レクイエムやジェネシスで反乱分子を国ごと消滅させる力を持ち
・細かい部分は高性能MSを使う「戦士」を駆使して対応する。


もし、キラやクルーゼの介入がなければ、

この「デスティニー・プラン」はもっと早く始まっていたのは間違いない。
ジェネシスを撃ち込まれた地球は、生命の大半が死滅すると言われている。

それほどの威力はなくても、もはや連合がザフトに対抗するだけの力は残らないだろう。

(核が使えなければ、有効な反撃手段もない)
ザフトを自分が掌握し、ジェネシスでにらみを効かせる。

後の『デスティニー・プラン』と状況は同じだ。

いや、本来のデュランダルの計画はこうだったのではないだろうか。

連合が「核」を手に入れたことにより、計画は遅れ、

代替の人員で行わなければならなくなったと考える方が自然である。

なら、本来「戦士」の立場にいたのは、クルーゼである。

ここから先は、私の推測でしかない。

クルーゼとデュランダルは本来、友人同士であった。
だからこそ、クルーゼはデュランダルの計画に協力していた。
しかし、この「デスティニー・プラン」によれば、クルーゼは「戦士」になる。
それはつまり、『デュランダルのための駒』になることを意味している。

デュランダル側からすれば、そのような区分けは意味がなく、

ただ遺伝子が示すとおりの立場を作ろうとしているに過ぎない。
それでもクルーゼ側から見れば「命令される立場」になることには変わりはない。
しかも、自分が忌み嫌う『遺伝子が定めた運命』だ。
クルーゼが本質的にデスティニー・プランに不信感を持っていても、なんら不思議はない。

クルーゼがデスティニー・プランを知ったのは、おそらくアラスカの前だろう。
彼はデュランダルの計画に一枚嚙んでいるし、チェスの回想シーンもある。

デスティニー・プランの骨子は戦争前からデュランダルが温めていたのは間違いないだろう。

なら、アラスカ~メンデル間で起きたのは何か?

考えうる要因はひとつしかない。
レイ・ザ・バレルの存在である。

クルーゼと同じ境遇のクローンであるレイ。
デュランダルは、彼をクルーゼの後釜に据えた。

それは、レイをクルーゼと同じ「戦士」として育てていたことを意味している。

本来のデスティニー・プランで「戦士」は、この二人を想定していた可能性は充分ある。

恐らく「戦士として育てられたレイ」をクルーゼは見たのだ。

『自分の代替品』をデュランダルが育てていることを。
そして思い知ったのだ。

自分は所詮『駒』でしかないことを。
そこで、温めていた人類抹殺計画を実行に移したのではないだろうか。