ユーラシア大陸をヒッチハイクで横断することを目指して出発。

日本→韓国→中国→カザフスタン→キルギスと進み、現在自転車で旅中。


3月3日

心地よいきれいな床で目が覚める。

居間に出るとアナがお茶を飲む?と聞いてくれる。

大きなソファーの一角に座らせてもらってお茶をいただき、ここからの道のりを調べる。H+の電波、使えるのは今日までだ。

この辺りのお店でもsimカードはすぐに見つかるのだろうか。

買おうか買わまいか、悩む。


ここからカザフスタンのタラスまで、自転車なら一日で行けるかもしれない距離だ。

そろそろ出発しようかな、なんて考えていたら、朝ごはんの準備が整った。

アナとアマと、一緒にいただく。

「夜、一緒にバーニャに行こう。」アナが言う。

バーニャとはお風呂またはサウナのことのようだ。

もう一日滞在するつもりではなかったが、何か面白そうだと思って、そうすることにする。

「じゃあ、家のことちょっと手伝ってね。」

「うん、分かった!」


では、一生懸命先の道について調べていたが、もう少しこの小さい村の暮らしをエンジョイしてみよう。

アマは小綺麗な服に着替えてどこかに出かける。

「これ、冷蔵庫に戻してくれる?」

アナはさすが先生だけあってか、ものを言いつけるのが上手い。

お手伝いさんもやって来て、野菜の下ごしらえを始める。

手伝おうかなと見ていると、

「それは手伝わなくていいよ。ゆっくりしていなさい。」

はーい。

ソファでお茶をいただきながら、特になにもすることがなく携帯をいじる。

アナは針仕事をやっている。

時々アナが写真を見せてくれる。

そうして静かな朝を過ごし、やがてアナが言う。

「もうすぐ生徒が来るよ。」


子どもたちが3人入って来た。

きれいな服に着替えたアナが、その子たちに勉強を教え始める。

皆がそれぞれ問題を解いて、アナが出来栄えを見る。

家庭教師なのだろうか?それとも補習?まさかこの村にいる子どもはこれだけ?

分からないけど、太陽の射し込む窓際で、皆熱心に勉強している。


2、3時間くらいで子どもたちは帰る。

仕事を終えたアナと、またパンと付け合わせを食べる。

午後もちょっとづつ人が入れ替わり立ち替わりやって来て、その都度お茶を飲む。

昨日のお店のおっちゃんもやって来た。

髪がぐちゃぐちゃした、真っ赤な頬の女の子もやって来た。

お手伝いさんらしき女性は、旦那さんが亡くなってしまったので、アナたちが仕事を探してやってもらっているのだそうだ。

アマも帰って来た。

アマは羊を見せてくれた。

住居のすぐ隣の小さな小屋に、十匹くらい。

藁をちょっとやって、ここでも特に手伝うことはなさそうだ。


「バーニャは夜遅いから、先に少し眠っておきなさい。私たちも眠るから。」

そうゆう訳で、夕寝。

起きたらアナはもう起きていて、もうすぐ夕ご飯だよという。

夕ご飯はベシュバルマク!

5本指と言う名前の通りに、手を使って食べる。

おいしい。羊。

「娘になる?」

とアナは聞く。


夜の10時半、バーニャに行くよと家を出て車に乗り、ごく近くのご近所さんの家に到着。

バーニャ出来てるよと、その家の人たちが迎えてくれる。

順番でバーニャに入る。

私は二人の女の子と一緒にバーニャに入る。

女の子たちの見様見真似で、蒸気のある部屋の中で少しだけお湯を汲んで、髪や体を洗う。

少ないお湯で洗うのに慣れていないから、上手く洗えているかちょっと心もとない。

サウナといったらすごく暑いところにじっと座っているイメージだが、女の子たちは体を洗い終えるとあっという間に出て行く。

仕方なく私も付いて出たが、外にいた大人たちも何も言わないので、ここではそういうものなのだろう。

すっかりアナたちも入るものだと思っていたが、私が出て来ると、それじゃ帰ろうかと席を立つ。

私のためにわざわざ連れて来てくれたのか。。。

申し訳なくなるが、この小さな村での暮らしがちょっと知れたような気がして、いい経験だった。


家に戻って、早速それぞれの床に向かう。

偶然出会ったひとたちと仲良くなって、その人たちの暮らしを知る。

やりたかった旅の中にいるのを実感して、大満足の眠りにつく。