私「ただいま・・・

 

誰もいない家に、いつものように呟いて戸を閉めた。

 

私は、この縁側のある古い家に1人で住んでいる。

 

私「はぁ・・・

 

鞄を置いたあと、無意識のうちにため息を吐(つ)いていた。

 

私は、この前沙織たちと行った秋山さんの家のことを思い出していた。

 

気がつくと、箪笥(たんす)の上に置いてあるフォトスタンドを自然と見つめていた。

 

そういえば・・・暫(しばら)く見ないようにしていたな・・

 

そう思いながら、箪笥の前に立った。

 

・・・・・この前ね、同じ戦車道をしている秋山さんの家に行って来たんだよ。

 

お父さんもお母さんも、優しそうな人だったよ・・・。

 

3人で撮った遊園地での写真。

 

私が笑顔で写っている最後の写真だ。

 

この一週間後、交通事故でお父さんもお母さんも・・・

 

事故の日の朝、私はお母さんと喧嘩(けんか)をして・・・そのままだった。

 

私は、フォトスタンドを箪笥の上に戻して携帯電話を見た。

 

お婆(ばあ)・・・どうしてるかな?

 

きっと、また説教されるんだろうということは分かっていた。

 

だけど、それでもお婆の声が聞きたかった。

 

3回目のコールでお婆が出た。

 

[あ・・・]

 

お婆が予想以上に早く電話に出たために、言葉が何も浮かばずに押し黙ってしまった。

 

すると、お婆は・・・

 

お婆 [どうしたんだい?]

 

そう言った。

 

あれ?いつもと違う・・・

 

私が戸惑(とまど)っていると、

 

お婆 [もうご飯は食べたのかい?]

 

いつものぶっきらぼうな言い方だけど、どこか優しかった。

 

[あ・・・まだ・・]

 

私は戸惑っていた所為(せい)で、本当のことを言ってしまった。