先日、いつものごとく本屋さんの中を徘徊していたら、興味深いタイトルを発見しました。
これは、医療業界では常識中の常識となっている「EBM」という考え方を紹介した本です。
- エビデンス主義―統計数値から常識のウソを見抜く (角川SSC新書)/和田 秀樹
- ¥798
- Amazon.co.jp
「EBM」とは「Evidence-Based Medicine」の略で日本語では「根拠に基づいた治療」と訳されています。
詳細についてはウィキなどを参照して頂きたいのですが、簡単に言うと、「何かの病気に対して治療を行うのであれば、統計学的に有用性が証明されている治療法を優先的に行う」という考え方です。
つまり、EBMにおける「根拠」とは、「統計学的に証明されたデータがあるかないか?」という事です。
事例を交えながら説明します。
ある科学者Aさんが、コレステロールを劇的に下げる秘伝の丸薬αを作ったとします。
これを近所に住む太り気味のおじさん達10人に、「これは私が開発した秘伝の薬です。これを飲むとコレステロールが劇的に下がりますので、試しに1ヶ月間飲んでみて下さい。」と言って渡します。
1ヶ月後、10人の血液を取って検査してみると、検査値は3mg/dl~30mg/dlまで幅があったものの、全員のコレステロール値が下がっていました。
時を同じくして、科学者Bさんが、同様にコレステロールを劇的に下げる丸薬βの開発に成功しました。
これを東京の××大学病院に協力を依頼して、1000人の高コレステロール血症の患者さんに飲んでもらいました。
ただし飲んでもらう前に、丸薬βと見た目は全く一緒だけれども、砂糖を丸めただけの丸薬もどきγを用意しました。
そして、500人にβを飲んでもらい、残りの500人にはγを飲んでもらいました。
1000人のうち、どの500人がβを飲んだかは、飲んだ患者さんも、薬を渡したお医者さんも知りません。
知っているのは、患者さんの採血データを管理している検査技師の方だけです。
1000人の患者さんに6ヶ月に渡ってβとγを飲み続けてもらったところ、βを飲んだ患者さんは、全くコレステロールの下がらなかった患者さんも何人かいましたが、平均値で20mg/dl下がっていました。当然ですが、γを飲んだ患者さんのコレステロールの値に変化はありませんでしたので、βとγの数値の差には、統計学的に有意な差がありました。
EBMの観点からみると、丸薬αの効果に信ぴょう性は全くありません。
10人全員のコレステロールは下がりましたが、それは偶然であるのか?プラセボ効果なのか?αの効果なのか?それとも別の要因があったのか?全く判断はつかないのです。
対して、丸薬βの効果は信ぴょう性があります。
500人のコレステロールが下がったのは、ほぼ間違いなくβの効果によるものと判断出来ます。
なぜ?
統計学的に有意な差が示されているからです。
感覚的にも、丸薬αは怪しいし胡散臭い、というのは、分かると思いますが、実は皆さん、Aさんにけっこうだまされています![]()
やらせ問題で打ち切りになった「あ○あ○大辞○」。
あのテレビ番組を見てその翌日、乳製品や大豆製品を買いにスーパーに行きませんでしたか?
あの番組で放送していた内容は、Aさんがやった事と全く同じ内容です。
また、画面の下に「個人の感想です」というテロップが出ているCMはほぼ間違いなくAさんパターンであるはずです。
こういった観点でテレビを見ていると、統計学的に検証された信頼性の高いデータを持って、情報発信しているケースが驚くほど少ない事に気がつきます。
だんだん長くなってきたので次回に続かせます。