会社のイベントの帰りに、思い出して空を見上げたら、いた。

天高く昇ったそれは、もはや「スーパームーン」と呼べるほどの迫力には欠ける感じがしたけれど。

上空はかなり風が強いらしく、次から次へと流れてくる鱗雲の間から、厳かな光を降ろしている。

いつもの帰宅途中の、我が家に程近い緑道公園が一旦途切れる交差点で、ふと思い立ち、上空のそれを見上げながら煙草に火を点けた。

そこかしこから聞こえてくる虫の声に耳を澄まして。

どうやら西からの風が吹いているらしく、気の早い枯れ葉がカサコソと私の前を左から右へ路面を滑っていく音も楽しい。

いかに家の近所といえど、最近は飼い慣らされて喫煙所以外での路上喫煙などすることもないのだが、時刻的に周囲に人影はない。

人がいないから良いとは思わないが、こんなこともたまには、悪くない。

しばし、つかの間のお月見としゃれこんだ。

かなりの強風に煽られて元の形がかなり崩されているのだろう。
詩的な表現ではないが、月の周りを流れていく不揃いな鱗雲が、私には味噌汁を温め直しているときに、沈殿した味噌が鍋の底から上がってくるように見えた。

とにかく、夜も更けた。
明日のために、つかの間のお月見と喫煙者の自由時間は早々に終了。

足元で消火した煙草を手に、真西に少し進み、ようやく我が家にたどり着いてみれば、月は変わらず我が家の玄関先を照らしている。

まずは風呂を沸かしながら、一杯飲み直し。


それから風呂に入り、今度は少し前に購入したデジカメでスーパームーンを撮ってみようと思い付いた。

いそいそと体を拭き、私が玄関先に出たら、もう月は雲に隠れて出ていなかった。

やれやれ、もう一杯飲む間にシャッターチャンスを期待しよう。

とにかく、夜も更けた。
おやすみ。