32歳で巨大卵巣癌と宣告され、自ら医師でありながら心身共に擦り減る生き方をしてきたことを反省した私。
これからの人生をしあわせあつめの旅とし、それを人と分かち合うために綴ります。
世界の生き物達を訪ね、いのちと幸せについて学び直しています。


前回に引き続き、ひんやりする話。

今回も怖い話が苦手な方は読まないで…



私は一度だけ、もしかして幽霊とか怨霊って存在するのかな…と思ったことがあります。



私がまだ、13歳とか14歳とか、そのくらいの頃のことです。


私の住んでいる家の隣には、古い一軒家がありました。庭の木や草がうっそうと生い茂り、建物の全貌はわからないくらいでした。


ご家族が住んでいるはずなのですが、一度も見かけたことはありませんでした。


ある日、突然家の周りに、けたたましいサイレンと共に、救急車やパトカー、レスキュー隊の車両などが何台も集まってきました。


何事かと思って見ていると、隊員達が隣の家に駆け込んで行きます。


後から聞いた話では、お隣の方が、自殺したらしい、という噂でした。


レスキュー隊まで出動するって、どんな死に方したんだろう…
と怖くなったのを覚えています。



私の家で、不思議な現象が起こるようになったのは、その直後からでした。


お隣で炊く線香の匂いが、私の家にまで漂ってきていた頃…


まだ日も昇らない明け方のことです。


私は学校が遠かったので、いつも暗いうちに起きて、1人で支度して家を出ていました。


その日も1人で朝ごはんを食べようとしていました。


その時…


ドカン!!


突然、棚の上の石の置物が落下したのです。

地震があったわけでも、触ったわけでもありません。

ちょうどお隣の家に面した壁ぎわの棚でした…

驚きましたが、その時はそれ以上気にしませんでした。



でも、奇妙な出来事は続きました。



夜中に、リビングから何やら音がして、目が覚めました。


恐る恐る見に行くと


テレビが付いていて、ザーッと砂嵐が映っていました。


寝る時は消えていたのにな、と思いながら、テレビを消してまた寝ました。


ところが、夜中の突然のテレビの砂嵐、数日に一度のペースで繰り返し始めたのです。


それだけではありません。


風も吹かないのに部屋の扉が、バタン!と勢いよく閉まったり。


誰もいないはずの物置から足音がしたり。


家族に話してはいなかったのですが、母も

「最近物置から音がするんだよね…気持ち悪い…」

と言っていたので、私の気のせいではないようでした。



とは言え、まさか幽霊なんて…と思っていた私ですが、とどめを刺すような出来事がありました。



ある日、1人でリビングにいた時のこと。


うちのリビングの床は、歩くとミシッと音がしました。
その時私は座っていて、他に誰もいませんでした。


なのに。


「ミシッ」


向こう側で、床が鳴りました。


そして続けて、

「ミシッ」

その手前でまた音が。


さらに


「ミシッ」
「ミシッ」
「ミシッ」


徐々に音が近づいてくる。

丁度、人の歩幅くらいで。


「ミシッ」


私の目の前まで来て、音が止みました。


逃げ出したかったのですが、体が凍りついたように動きませんでした。

目の前に、誰か立ってる??




…そのあとは、特に何も起こりませんでした。

ただひたすら身の毛がよだつ感覚が残りました。





家での怪奇現象は1ヶ月ほど続いたように思います。
いつの間にか、おさまっていました。


話したところでバカにされるだけかも、と思い家族には今でも話していませんが、もしかしたら家族も黙ってるだけで何か感じていたかもしれません。



今そのお隣の家は、もうありません。


何年も前に、建物ごと取り壊されて、今は駐車場になっています。




私が本気で見えない何かを感じてしまったのは、この一度きりです。

たまたま何かの偶然が重なっておかしな現象が起きていただけかもしれませんが。

やっぱり、目に見えるものだけが真実、ではないのかもしれません。