給湯室で2人きり。

ドラマみたいなシチュエーション。

「昨日の話どうだった?」

月9じゃなくていいから

昼ドラでいいから

不倫を迫られた方がマシだった

グチグチいびられた方がマシだった

「勉強になりました」と、どこまでも八方美人な私に、「なんか今日肌の調子いいんじゃない?」と、宗教先輩。

嘘つけ。

最近年齢も考えずに化粧落とさずに寝ちゃう日が続いてたから、MAXでボロボロだよ。

「セミナーに出れば欲しい能力がなんでも手に入るんだよ」と宗教先輩。

うわぁ、昨日より胡散臭くなってるよ。

やっぱり笑顔逆効果だったよ。

「ゴルフのスコアが上がった人もいるんだよ」

えぇー。

色々言いたいけど言葉にならない。

ここまでだ。

もう仕方ない。

腹を決めよう。

これで宗教先輩が怒っても、嫌われても、もういいじゃないか。

「じゃあ、おっぱい大きくなりますかね?」と聞いてみました。

「なるよ」と、宗教先輩。

なるんだ。

入信します。

決定的な一言を言わせる前に途中で帰る言い訳なんていくらでもあったじゃないか。

最後のいい笑顔なんて完全に逆効果じゃないか。

5年も水商売やってて何も身についてませんでした。

きっとお客さんの話を、「乗るだけ乗ってあとはブチればいいや」で済ませてきたせいです。

その日その日の売上だけで騙し騙しやってきた私には、相手の要求を交わして自分のペースに乗せる、キャバ嬢として欠かせないスキルがありません。

結局それなりにしかやらなかった事は、それなりなんですね。

とか言ってる場合じゃねぇ。

次の日、事務所に出勤すると宗教先輩もいました。

でもここなら大丈夫。

私以外の誰かが勧誘された話は聞いた事がありません。

だから私も直接切り出されるまで宗教先輩が宗教先輩な事を忘れていたんです。

2人にならなければ大丈夫

だと思っていたら、まんまと2人になりました。

別の先輩に頼まれて、給湯室で洗い物をしている所にやって来た宗教先輩。

だから嫌なんだ。

だから下っぱは嫌なんだ。

心のゴミの分別の仕方を説明しだした宗教先輩。

「興味がない」とハッキリ断らないといけないとわかっているのに、「ははぁー」「なるほど!」と、良い相槌を打ってしまう私。

私の心の一番のゴミは、八方美人な所です。

ひとしきり説明し終わり、「セミナーに来てみない?」と宗教先輩。

こればかりは良い返事で答えるわけにもいかず、角が立たない断り方を考えていると、「セミナーって言っても、ノート取ったり勉強するような堅苦しいのじゃないよ」と宗教先輩。

違うんだ。

私が黙ったのは「セミナーって難しそうだなぁ('ω`;)」って思ったからじゃないんだ。

そこで迷ってるわけじゃないんだ。

私ってそんなにバカだと思われてるんだろうか。

「皆でリーダーの話を聞くんだけど」

うわぁ、それテレビで見た事ある。

「15万なんだけど」

馬鹿か。

だけどこの馬鹿大金のおかげで、「そのセミナーは素晴らしいと思うけど、そんな大金持ってません」的な感じで断る事ができました。

この日はここでお開きとなりました。

「今のリサちゃん、いい笑顔してる!話聞く前よりずっといいよ!」と宗教先輩。

あぁ、そうですか。

作り笑いで飯食ってきて良かったなと、この時ほど思った事はありません。