事務所から駅へ向かう道には、路上ミュージシャンを始めとした路上○○が沢山います。

アクセサリー、似顔絵、写真や絵葉書。

珍しい所では、『あなたの第一印象で一言書きます』とか、『誉めます』なんてのも。

次から次から、皆よく思いつくもんです。

週末は、島根の商店街なんかより断然賑わっています。

その中でも特に人が集まっている場所がありました。

どちらかといえば初老に近いオッサンが望遠鏡を構えているその場所には、行列ができていました。

そして、その望遠鏡を覗いた人達からはものすごい歓声が上がるんです。

ただでさえ狭いこの都会の空で、天気は曇り。

一体何が見えると言うのか?

並んでいるカップルに、『何が見えるんですか?』と訪ねる通行人。

『さぁ?実はわかんないんですよー(笑)』と答えるカップル。

わかんないのに並んじゃってんのかよ。

こいつら全員暇かよ。

と、思いながら、そのカップルの後ろで順番を待つ私達。

列が進むにつれ、どうやら土星が見えるらしいという事がわかりました。

望遠鏡には詳しくないですが、今日は曇りです。

天候関係なく見えるもんなの?

そんな事を考えていると、先に見終わったグループの1人の女性が、オッサンと赤外線交換しようとしてました。

マジか。

じゃあきっと見えるんだろう。

土星が見えたからって、見知らぬオッサンと赤外線するノリは全然わからないけど、そこまでするって事はきっと見えたんだろう。

既に土星より珍しい物を見た気もしましたが、今さら退く気もありません。

待ちに待って、やっと順番が来ました。

え?

これ写真じゃね?

写真っていうか、理科の教科書とかに載ってたイラスト。

はっきり見えすぎて教科書みたい!じゃなくて、はっきり教科書。

歓声や赤外線ばかりに目がいって、サラっと帰って行った人達は気にも止めていなかったんですが、今からでもあの人達を追い掛けたい。

社交的なタイプではないけれど、今なら仲良くなれる気がする。

これでお金を取られていれば文句の一つも言いますが、タダなので何も言えず。

『並んでみようよ!』と誘ってしまった負い目を、無駄なハイテンションでなんとか取り繕おうとするも、イラストはイラスト。

オッサンめ。

微妙な空気の中、駅へ着くと、新快速が行ったばかりの普通だらけの電工掲示板を見た時の脱力感ったらなかったです。

オッサンめ。

お金を取るわけでもない

悪意があるわけでもない

何のメリットがあって、何がしたくてやってるのかもわからない

オッサンめ。

普段なら持て余す普通電車での帰り道は、さっきの土星の話で持ちきりだったよ。

オッサンめ。

あなたこそエンターテイナーだよ!