そして琥珀色の想い出

そして琥珀色の想い出

桜将の小説ブログです。
不定期更新ですがよろしくお願いします。

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泡沫、そんな言葉がなんとなく耳に引っかかっていた。
韻も、字も何もかもに目を惹かれていった。



「…ユーリ…どうしてこんなところに」

大木の枝に横たわって下を見下ろすユーリを見つけ、サヤはあきれていた。

「いや、ちょっとお前をからかいに来た」
「あのですねえ…ハジメはいませんよ。お仕事に行きました」
「あいつまだ“歌”やってるんだな」

ユーリの言う歌は、ハジメが働いていた酒場での催しの一つで、本当は歌姫がいたのであったが、酒場の店長と喧嘩をしてしまい、急にやめてしまったのであった。
そんなとき代役を買って出たのがハジメだった。
はじめのうちはあまり期待をされなかったものの本番になりその目は変わった。
透き通る声、偽りや見栄をはらないその姿にその酒場にいた全員が魅了されてしまった。
そうして今や、ハジメは酒場のバイトをしつつ歌を披露する毎日となっていたのであった。
けれど、ハードスケジュールにサヤのドクターストップがかかったものの本人はやりたいと一点張りだったため、サヤのほうが折れるしかなかったのだった。
そんなときのことを思いだし、サヤはため息とともに愚痴を募らせる。

「ええ、本人がやりたいと言ってきたものなので…断れなかったです」
「子犬みたいな目で言ってきたんだろ。大体予想がつくぜ」
「ユーリは行かないんですか?ハジメの歌を聞きに」
「俺が行ったら、あいつテンパるだけだよ」
「…否定できないのがあれですね」
「だろ?」

ユーリがハジメのギルド内にある大きな大木の太い枝に乗っているところをサヤが見つけ2人そろってそこにたたずんでいた。

「それで?お前は休みなのかよ」
「ええ、先方に不具合が生じましてね、また今度の機会にとのことで」
「ほかの奴らは?」
「全員、お仕事です。ツキヤがポストに入っていた依頼を定期的に見てなかったせいで大変なことになっていましてね」
「…ツキヤ、たまにやることがえげつないな」
「仕方ないですよ。まだまだ若造なんですから」
「お前が言うか?それ」
「おや、ユーリだってそうですよ?私からすれば若造です」

年配の男を舐めてはいけないですよ。
そういうとサヤの特徴の鮮やかな色彩の羽織がふうわりと風に流れた。
それを見るとこいつ本当は爺さんなんじゃないのか…と心の中で疑問を持たずにはいられず初めて出会ったときは、お互い敵意むき出しで気がついたら戦闘態勢になっていた。
そして知った。こいつには勝てない。と
サヤの鮮やかな藍色が風になびいて、牡丹の柄が生きているかのように揺れていた。
そうやって心地よい無言のなかサヤが口をひらいた 。

「ユーリ、“泡沫”という言葉を知っていますか?」

唐突な発言に、ユーリは目を点にした。

「…泡沫…ねえ…雰囲気は“泡”って感じだな」
「確かに、見たままだとそうですね…でも、泡沫というのは“消えやすい”という意味でもあるんですよ…泡沫の想い、泡沫の願い…など」
「…それは、お前自身がそうだからか?」

図星を突かれたというようにサヤの体が少し揺れ、苦笑いを浮かべた。

ハジメのギルドメンバーは、ハジメ以外“不死”の体を持つ式神たちである。
世の移り変わりを幾度となく目撃し、そして悲しみ憎んでいった者たち

「…最初の頃はうれしかったですよ。歴史の最後を見届けることができて…けれど年を重ねていくうちにわかったんですよ…“死のない身”というのがどれだけ幸福で…そしてどれだけ絶望的なのか」
「……苦しかったんだな…親しかった奴らとの決して逃れることのできない別れ…とか」
「……ユーリも…あったんですか?そんなことが…」
「…………まあ……野暮な話だよ」

お互い、許しあえるようななかではあるものの、奥底にある濃い内部までは明かすことはなかった。それは2人にとって暗黙の了解の一つでもあるのだ。

「……なあ、サヤ…俺はあんたがどんなに苦しい生き方をしていたのかはわかんねえけど……“今は幸せか?”」
「……ユーリ、そんなこと聞くのはそれこそ野暮ですよ」

小さく微笑むその姿は、どんな存在も魅了してしまうかのような、何とも言えないものだった。ただいえるのはこの世のものではないということそれにつきる。

「ま、そーかもな」
「ええ」


そうやってお互い笑いあうと、元気な声が2人が登っていた気に向かってきていた。




泡沫の想い
泡沫の願い

不死の体を得て、そんなもの幻だと思ってしまった。

けれどその時に出会ってしまった。




――――あのまぶしい“笑顔”に








“今はとても幸せです”
ユーリにも、君に聞こえぬようにか細く、ささめくようにそっとつぶやいた。






あとがき
…私の分はマッハのスピードで終わってゆく…。

けれど、こうな風にオリキャラたちのお話を作っていきたいと思います。