隠者の遠近見聞思録-2部







五・一五事件で犬養毅首相(=政友会総裁)が暗殺され、
政党政治は、事実上、ピリオドを打たれてしまった。


軍部出身の首相は不急不要の解散・総選挙を繰り返し、
政党人を疲弊させ、政党を弱体化させてしまった。

ドイツのナチス党のような一党独裁を目論むが、
やがて、それは大政翼賛会というカタチで実現する。


世情も言論界も戦時色を強め、
戦線拡大に異議を唱える者は非国民扱いされていく。


レミングの大群がフィヨルドの断崖絶壁を目指して突進するように、
日本は官民あげて戦争拡大へと突き進んでいく。


「ちょっと、待った!」と言う者は、どんどん疎外されていく。



満州事変を契機に関東軍は暴走していく。


戦線不拡大=国際協調の路線は日に日に後退し、
議会はほとんど機能せず形骸化していく。



しかし、そういう時代に抵抗し、
犬養健や王精衛などの日中の若手政治家たちは、
密かに日中和平の道を模索するが、


日中双方の軍の手先である特務機関にテロや要人暗殺で妨害され、
事態はますます混沌とし泥沼化していく。


日中関係の平和的解決を陰に陽に目論む近衛首相の方針は、
盧溝橋事件の勃発でもろくも潰えてしまう。


一発の銃弾が、
日本をあらぬ方向に引きずり運命を変えてしまった。