このたびの自由民主党総裁選挙で圧倒的な存在感を示し、
安倍総裁のもとで幹事長を務めることになった石破茂さんの推薦書が、
この、猪瀬直樹さんの「昭和16年夏の敗戦」だった。
自由民主党、衆議院埼玉県第3選挙区(草加・越谷市)支部長である、
黄川田仁志さんの集会に講演でおいでになったときのことである。
早速、買い求めて、読んでみた。
何故、
「昭和20年夏の敗戦」ではなく、
「昭和16年夏の敗戦」だったのか・・・?!
読み進めるうちに、
哀しいほどに大日本帝国の組織的疾病が分かった。
昭和16年、
官僚・軍部・民間などから選抜された新進気鋭が、
「総力戦研究所」で対米英戦争の可否を研究・考究し尽くし、
「影の内閣」を組織して、実物の内閣と論戦を戦わしたが、
その結論は、日本の敗北であった。
昭和16年夏の時点で、
日本の敗戦は必至というのがハッキリと認識されていた。
しかし、現実は、そうと知りつつ、戦争拡大の道を驀進した。
何故に、そうなってしまったのか?
この小著は具体的かつ詳細に経緯を検証している。
コレは、ある種の、いわば、日本人論でもある。
敗戦必至の戦争に、何故、日本は突入していったのか?!
私ながら思惟してみたとき、
ある一連の著作を思い出した。
それは、戸川猪佐武さんの、「党人の群れ」全3巻である。
第一部は、「五・一五事件」である。
何故、政党政治は崩壊して、軍部独裁を許してしまったのか?
歴史年表的に表面をなぞるのではなく、
軍部、政党人、官僚、民間言論人たちの姿を描くことで、
時代特有の世相や世情を明らかにし、同時代人の感覚を与えてくれる。
まさに、近代史の私小説である。