先日もエッセイ集について書いた、千早茜の新作 「ひきなみ」

2021年4月単行本初版

 

二部構成になっていて、一部が小学生から中学生時代。二部が社会人。女性二人が主人公。

 

性の話、女性の話、セクハラ・パワハラの話、であることが二部で明確になってくる。もちろん一部でもその話は出てくるのだけれど、まだ中学生でもあるし、読んでいる時にはもう少し広義な多様性の話に行くのかなと思っていた。

 

パワハラの話、セクハラの話の終わらせ方は難しい。摘発すればいいというものでもないだろう。社会的制裁がいいというわけでもない。当事者双方が納得(?)し、今後の再発もないと思われる解決型が必ずあるとも思えない。この小説もケリは付けているけど、これでいいのだろうか?

 

アドラーでもあるけれど、この小説の中にも何回か出てき、千早茜が何回かエッセイでも言っている、「ありのままを受け入れる」もなかなか難しい。

 

相手が「間違っている」場合
 -何をもって間違っているというのかの価値観の問題はそもそもあるが、

時にそれをありのまま受け入れるのはいいことなのか? ありのままを受け入れるというのは、時に受け入れ側にとって単なる「易きに流れる」ではないのか? 何も言わないで放っておくのは時に楽だ。

 

第一部の濃密さに対して、第二部のバーでの面会以降の類型的な感じが、やや惜しいと思う。

 

★★★半

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