「ドビュッシーはワインを美味にするか?」 ジョン・パウエル
 
古本屋のワゴンで100円で購入。カバーもない。2017年初版。
正直題名に引っかかったのだが、これが完全に早川書房のマーケティング。
英語題名は Why you love music と何のひねりもない。
 

内容的には音楽を さらには音楽専門家(演奏者・作曲家・研究者)や音楽業界関係者の常識やルールを心理学的角度+物理学的角度で分析していくもの。訳者あとがきによれば著者はイギリスの物理学・音楽音響学の大学教授。

身近なところに作曲の専門家がいるので、音楽作曲に関する会話をするのだが、その辺全くの門外漢でセンスのない小生には理解できないことが多く、質問しても向こうには常識だったりするので、回答を理解できない。呆れられるのがせいぜい。
 
そのいくつかが、わかったような気になれた。
(完全に理解したとは言えない-多分それは永遠に理解できないんだろうと想像する)

オクターブとは何か、の話
長調と短調の話
音色と音の高さ(本書ではピッチと呼ばれている…と思う)の話 (フルートとオーボエで違う音なのに同じドの音)
不協和音の話

巻末にある「やっかいな詳細」が面白く、ここで解明されたことも多かった。
ここで再度説明されているメロディの話はとても面白かった。こんな話。
 
4人のフルート奏者がいて、一人がメロディを演奏して、残り3人は伴奏。これを入れ替えて、全体の音の構成・順番は全く変えずに、だれがどの音を演奏するかをシャッフルして変える。
結果としてメロディラインを演奏する人は誰もいないが、人間の耳にはメロディがちゃんと聞こえる、のだそうだ。すごいぞ人間の頭脳!

ただ、才能のところの、
才能は存在しない、練習時間の長短だけだ
という話には絶対納得しない。(統計的な裏付けも付記されているが、そこは小生の専門領域)

長時間練習するモチベーションになるのは、速く上達するからであり、ある程度の時間やっても上達しないから放り出すのだ。
また、できるから好きになりそれが練習につながるし、できないから嫌いになり練習しない。
練習時間の長短と相関関係があるのは事実だったとしても、それが才能の存在を否定してはいないはずだ。
(と、ムキになる)
 
音楽と人間の頭脳との面白い関係を理解できて、ちょっと角度を変えた知識を持つことができる本。
 
★★★★
 

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