黄金列車 佐藤亜紀 2019年10月 初版

 
確か NEWS の加藤シゲアキ氏がどこかで紹介されていて、小生の「お気に入り」の中に保存してあり、今回購入。
 
第二次大戦末期、ハンガリー政府がユダヤ人から没収した財産を列車に積み、それを守るために列車を走らせる官吏たちを描いた本。列車そのものは実在のものだった、と巻末にある。
 
まるで翻訳のような、文体。短文の積み重ね。内容的にも海外が舞台のため、翻訳を読んでいるかのように、途中で誤解することが何度もあった。主人公バログの過去の回想と、行ったり来たりするところが何度もあるが、そこが空白行もなしに列車の場面と行き来するので、その混沌さが作者の狙いなのだろうが、小生にはやや分かりにくい。
 
帯で言う「文官の論理と交渉術」をやや期待しすぎて読み進めたためか、大きな盛り上がりをどこかで期待したようで、最終的にはややさらっと終わったなという印象。
 
「官吏」「文官」の世界の文化(決裁・指示書・リスト・議事録)というものは、戦時中でも生き続けており、武力にでも太刀打ちしうるというのは面白いが、ただやっているのはその論理というか建前だけではなく、経済力も大いに活用している点が、現実的ではあるが、キレイではない。と非難してもしょうがないが。。
 
感情の起伏を踏み込んで表現することなく、描写を積み上げていく書き方は、好みのわかれる文章だと思う。場所の移動や状況説明も、ごく少なく抑えられており、巻頭の地図と何度行き来しながら読む必要があった。
 
★★★
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