先日放送された、「タイプライターズ」という、本の番組で NEWSの加藤シゲアキが紹介していた本。 映画は父を殺すためにある 島田裕巳

シゲが紹介した本は2冊あるのだが、どちらも入手が難しそうな本だ。先に入手しやすそうなこちらを読んだ。
 
ローマの休日・スタンドバイミーやスターウォーズなどの洋画(主にハリウッド映画)や、邦画の櫻の園・魔女の宅急便、黒沢作品小津作品、最後の寅さんと、すべて通過儀礼という視点を通して、その背景となる社会的価値観や監督の個性なども含めて説明する。
 
通過儀礼というのは、ある意味反抗期を抜ける、とも言えることで、ローマの休日では王女という自分が望んだわけでもない役割に反抗して飛び出した主人公が困難に直面し、それに打ち勝つことによって成長し、王女という役割を受け入れるようになる、ということだそうだ。それはスターウォーズでは父殺しということになり、本の題名にもつながる。
 
父殺しというテーマは、オイディプス・コンプレックスとも呼ばれるものであり、フロイト以降語られている話。スターウォーズとの関係に言及している記事も巷に散見される。
 
通過儀礼として、一本ロジックを通しているのはわかりやすいし、その観点で書いたというのはわかるけど、映画の良さはそれだけではないし、別にジブリファンではないが、その点だけで「魔女の宅急便」、さらには各種の宮崎作品を「説明のつかない矛盾がいつも生じる」とまで言えるのだろうか。人間は通過儀礼だけをモチベーションとして行動するのだろうか。
 
後半の寅さんと夏目漱石の類似を指摘する部分も、山田洋二監督が漱石を好きで名前や場面などを引用しているのと、通過儀礼などのプロットの類似が混ぜて語られており、無理やり感は否めない。前半の切れ味はよかったのだけれど。
 
でも、加藤シゲアキさんも、こんな本を紹介するような嗜好の持ち主で、アイドルやっているのも大変だろうな、と勝手に心配してしまう。
 
★★★
 

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