乙川優三郎 の短編集 トワイライト・シャッフル
単行本 2014年6月 文庫 2017年1月

 

房総半島の海岸沿いの街に関連のある短編13編を集めている。

短編ではあるが、各々は短編とは思えないほど凝縮しており、その読後感はずっしりと重い。ただ、本好きにとっては、決して嫌な重さではなく、美しく巧みな文章と、その言葉によって描かれる映画か絵画のような景色が、読者を陶酔にさそう。

 

房総の海岸や庭のうつくしい自然の描写と、バーや酒・ジャズなどの音楽の描写が入り交じり、うつくしい絵を作り上げていく。そこでうごめく人間たちもそれらの風景に負けない際立った個性を持っている。

 

個人的には、ラス前の「私のために生まれた街」が好きだ。外構周りの土木職人が読書というもので自分のアイデンティティを確認する話だが、そのゴツゴツとした武骨な感じと仕事の繊細さ、かつ本から影響を受ける心のしなやかさのバランスが心地よい。彼が読んだジュンパ・ラヒリの本を購入してしまった。

 

帯の「珠玉としかいいようがない」に、まったく同意するしかない 本

 

★★★★半

 

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