食の精神病理 大平健
前の「性食考」の中で紹介されていて購入。この作者の本は 「豊かさの精神病理」「やさしさの精神病理」共にだいぶ昔に読んでいる。現場の先生なので、事例が説得力があるし分かりやすい。童話の話をすると、患者が納得するとか、思わぬ角度で理解するとか。
特に後半の、拒食症・過食症の発症数の増加とその減少、その背景にある自己意識の変化。そして90年代半ばからの、自己の分裂の話は説得力に富んでいる。
ああ、やさしさの時代はその分裂が距離を置かせているのか、とか、アトランタの有森裕子の発言はそういうふうにも解釈できるのかとか、目を開かせてくれる。
僕らにとっては、自己の分裂は当たり前で、完全に所与のこととしか思えないけど、過去にそうでない時代があったのだろうか? また、今、そうでない人がいるのだろうか?
思い起こせば、中学生の頃のあの解脱とも言えるあれが、自己の分裂だったのか?
★★★★