こころ 夏目漱石


言わずと知れた名作。海外旅行中に機内で読もうと思って購入。
中学生以来になるだろうか。

明治時代の文章だが、今読んでも何ら読みにくいところも古めかしいところもないことに驚き。
そしてテーマそのものにも古臭さはない。その普遍性・超時代性に驚く。

こころでは先生の自殺や「向上心の無い者はばかだ」という言葉が有名だが、これは3つに分かれた章の最後の先生の手紙に出てくる話
(ばかだ、はその前でKが先生に投げかけたものが手紙の中で、もう一度出てくるのだが)
その他の2章は「私」の独白部分である。これがだれに向けた独白なのかは不明だが。

もちろん迫力と言い、その密度の濃さと言い、先生の手紙の部分の素晴らしさは圧倒的なのだけどその手前の、いわゆる「高等遊民」的なある程度の生活が確保された中での、私と先生の、理想と現実、個人と社会との間の相克の部分も共感する。

今と比較すると、純粋培養的な状況へのうらやましさを感じてしまう部分もあるが、それでもそのテーマは薄れることはない。

先生の自殺もKの自殺も、中学生の時の理解より、より深く背景を理解できた
(と思う)ことに安堵している。

★★★★