戦争調査会 井上寿一 講談社現代新書

戦後すぐの幣原内閣で設置された戦争調査会の資料を紹介し、検証する本。
最後には日本がなぜ戦争を始めたか、どこが開戦を避けられるポイントだったか、
どこがもっと早く修正できるポイントであったかを、筆者が検証する。

戦争調査会は、占領軍主体による東京裁判に対し、内閣主導で設置された
なぜ、戦争を始めてしまったか の理由を探る会。
後から振り返れば なぜ負けるとわかっている戦争を始めてしまったか
と思われるため なぜ負けてしまったか、 と敗戦理由の調査を行うとの誤解もあり、結局その誤解により、占領軍に解散を命じられてしまうのだが、目的はあくまで、戦争を始めてしまった理由

昨今の公文書云々の問題がある中で、こういう本を読むと
正しく記録を残し保管しておくことがいかに大事か、がよくわかる。
歴史を検証するには、正しい記録が必要なんだということ。

そして、大局を見ない政争がいかに間違ったことをするか。
統帥権干犯問題が、軍側からではなく、野党・政友会(犬養毅)が持ち出したものであること、
は知らなかったし、その主張がどのような流れを作っていくことになってしまったか。
(彼は結局5・15で暗殺され、その時の「話せばわかる」という言葉でどちらかというと、
戦争反対の盟主のような感じで思っていたが、ロンドン軍縮にも反対していたという)

その他、北一輝という一人の人間の思想が与える影響、松岡外相の野心など
こういったある意味小さいことが大きな流れを作っていくのだと思った。

もちろん、筆者の言っているように主観的でない歴史書なんていうものはなく
この本も筆者の主観に基づくものであるのだが。

今の世の中の流れがどうなのか、どこに向かおうとしているのか、それで大丈夫なのか
きちんと見て、自分のできることはやっていきたいと思う。
快著。

★★★★半