「夏鈴ちゃ〜ん」

「ふふっ、なんですか?理佐さん」

「可愛い〜!」

…私は何を見せられているんだろう。

「理佐のとこ行かんくてええの?」

私の膝の上に乗っているみいちゃんがこちらを振り向きながら心配そうに聞いてきた。

正直行きたいし、理佐は私だから近づかないで!って大声で言いたい。

だけど、そんなことをしたら理佐の思うつぼだ。

だって理佐は最近、わざと私が嫉妬するようなことをして、その反応を楽しんでいる。

その証拠に今だってチラっと私の方を見ては、ニヤニヤと笑っている。

「いいの!こっちだって嫉妬させられてばっかじゃ悔しいもん」


…あ、そうだ。

私の頭の中にある考えが思い浮かぶ。

「由依ちゃん、今すごい悪い顔してるで」

「んふふっ、いいこと思いついちゃった」

「いいこと?」

不思議そうに首を傾げるみいちゃんの耳に「ちょっとごめんね」と顔を近づける。

「…えぇ!それ、ほんとにやるん?」

「あったりまえじゃん!」

「たぶん理佐に怒られるの私やで」

「怒られないように私が何とかするからさ。ね、お願い!」

「…わかった」

渋々だがOKしてくれたので、早速みいちゃんの向きを変え対面で座らせ、ハグをする。

「はぁ、みいちゃんほんと好き。一緒にいるとすごい落ち着く」

「そう?それは嬉しいわー、私も由依ちゃんのこと好きやで」

まあまあ大きい声で言ったのでたぶん理佐にも聞こえてると思う。

他のメンバーにもちらほら聞こえてた人がいたみたいだが、そんなことは気にしない。

ターゲットは理佐だからね。

さて、理佐の反応はというと…


あ、めっちゃ頬を膨らませてる。

リスみたいに頬をパンパンにさせ、こっちを見ている理佐が可愛すぎて思わず頬が緩む。

すると理佐は、私がニヤニヤしていると勘違いしたのか、「夏鈴ちゃん好き」っと言いながら抱きついてやり返してきた。

理佐がその気なら…

「みいちゃんの顔めっちゃ好き。すごい可愛い」

「夏鈴ちゃんいい匂いする。その匂い好き」

私がみいちゃんのことを褒めると、理佐も負けじと夏鈴ちゃんのことを褒めるので、みいちゃんと夏鈴ちゃんの顔は真っ赤に染まっている。

もうこれはもはや戦いだ。

「みいちゃんの声好き」
「夏鈴ちゃんのほっぺモチモチで好き」
「みいちゃんの髪色綺麗」
「夏鈴ちゃんの笑顔可愛い」

そのままこんな感じのが暫く続き、周りの人達もどう止めようかと考え始めたその時だった。

平行線になるかと思われた戦いだったが、私の一言で自体は一変した。

「男だったら本当にみいちゃんと付き合いたい」

…あ、しまった。

これは言っちゃダメなやつだった…

前にナベトークで玲ちゃんに言った時、次の日立てないくらいにめちゃくちゃにされ、もう絶対言わないって決めたのに…

口から出た後に後悔してももう遅い。

案の定理佐は怒っている様子で、ズンズンと私のところに歩いてくる。

「ごめんみい、ちょっといい?」

有無を言わさぬ理佐の迫力に思わずみいちゃんも素早く私の膝から退ける。

「あ、ちょっ、みいちゃん待って!行かないで!」

私の助けを求める声は儚く消え、周りを見渡してみるも、みんな我関せずという顔をしている。

やばい、どうしよう。

私の脳内はもう警報がありえないくらい大音量で鳴り響いている。

「由依、隣座るね?」

この言葉だけだと一見優しい普段の理佐だが、いつも楽屋ではこば呼びの理佐が我を忘れて由依呼びになってるし、口角は上がってるけど全然目が笑ってない。

これは相当怒ってる時の理佐。

しかもこの問いに私の否定権なんてない。

「う、うん。どうぞ…」

私が萎縮気味に答えると理佐はぼふっと少し乱暴に私の隣に腰掛けた。

張り詰めた雰囲気に無言の時間が続き、楽屋の空気が重たい。

「ねえ、今と後でどっちがいい?」

数秒ほどの沈黙を1番最初に破ったのはやはり理佐だった。

ていうか…

「え?」

さすがに理佐の言動の意味が分からず、自分でも思わぬうちに声が出てしまった。

「いや、だからさ。誰にでも尻尾振るわんちゃんの躾け、今と後どっちがいいかなーって。本当はすぐ躾たいところだけど、可哀想だから選ばせてあげる」

いや、そんな感謝してよねっみたいな顔でそんなこと言われても…

「今ってまさか、さすがにここでとかじゃないよね?」

「ん?そのまさかですけど」

「いやいや、ここではダメでしょ!みんないるし!」

「そんなの関係ないよ。みんなに見てもらえばいいじゃん。由依は私のだって」

そう言い放つ理佐の顔は、驚くくらい冷たく黒い笑みを浮かべていた。

さすがにこの理佐の狂っているような発言は、楽屋のみんなも無視出来なかったようで、全員が心配そうな顔でこちらを見つめている。

今の理佐なら本当にやりかねない。

「じゃあ後でっていうのは…?」

「後でがいいなら家まで我慢してあげる」

「ちなみに、なしっていう選択肢は…」

「ない」

食い気味に否定され、逃げ道を全て塞がれた私は、観念して白旗を上げる。

「…じゃあ後で」

「んふっ、お家で朝までじっくりコース楽しみにしてるねっ」

「え!朝まで!?」

「もちろん。明日由依オフでしょ?私も仕事午後からだから」

唖然としている私を置いて、じゃあまたお家でなんて言い残し颯爽と私の元を去っていく理佐。

そんな理佐の、楽しそうな鼻歌だけが私の脳内に流れ込んできた。











お読みいただきありがとうございました。



なんか途中からよく分からないストーリーになってしまいました😑

ちなみに、2日後も由依ちゃんは腰痛だったそうです🤭

理佐ちゃん何したんでしょうね〜笑

この後のことは、皆さんの想像にお任せします👍








では、また👋