今日を、迎えられたことに、感謝。
過去のことを振り返るブログを書いています。
ご興味のある方は読んでみてください。
(続き)
引き続き、泌尿器科での入院を希望し、介護認定調査を終えた父。
もうこれ以上、父の気力と体力を奪わないでほしい…。
家に帰れる日がくるのか?
不安ばかりの日々…。
母も、自分も、そして妹も、見守ることしかできない日々…。
父は、携帯での電話も、メールもできないほどに衰弱していました。
母にとっては、父の様子を唯一知る手段。
それも出来ない…
自分は、仕事の帰りに、土日に病院と実家を行き来し、両親の様子を伝えました。
お互いがお互いを…。
しかし、父は、気力をそぎ取られ、辛い、という言葉を連発するようになっていました。
そして。
介護認定調査から5日後。
病院から緊急呼び出しが……。
父の容態が芳しくなく、すぐに来てほしい…と。
自分は、上司に早退の許可をもらい、母に連絡し、病院に向かいました。
いつもの主治医とは違う、医師が話をしたいと、別室に呼ばれました。
急な事で、心の準備が出来ていない自分。
急いで来たこともあり、呼吸も、気持ちも整えることができないまま…。
その医師は、現在の治療方法と、父の様子を話しました。
「既に、痛み止めの貼り薬が効かなくなっています。
「そして、肝臓に更に転移が確認されました」
………………。
「父は、食事はもう出来ないのでしょうか……」
やっとの思いで出た言葉がそれでした。
「食べ物の通る管というか道に、腫瘍が飛んでいます。もう、食事なんて出来る状態ではないんです。主治医から説明はなかったのですか?」
知らなかったの?というような表情の医師…。
何度も、この別室で説明を聞いてきた。
でも、食事が出来ない理由、今後も出来ないなどという説明は一切ありませんでした。
そのことを医師に伝えると、
「まぁ、そういうことです。ので……」
……!!!
な、なんて……!
いつもいつも……!
非情にしか思えない、主治医や、この医師…。
ひとりひとりの患者に、いちいち情をかけていたらとても務まるものではない…。
頭ではわかっていても、目の前にいる医師が、主治医が……こんな人たちに父を預けてきたことを、悔しくて、悲しくて……。
「それで来ていただいたのは……」
もう、何も聞きたくない……。
これ以上、父を苦しめないで!
自分は、何もかも投げ出して逃げ出したい思いに駆られ……
一瞬……気が遠くなりました。
次の言葉は聞きたくない……
もがいても、もがいても、どうしようもないことなのに………
(続き)
医師の話を聞かない訳にはいかない。
母に伝えなくては…。
この日、緊急呼び出しを受け、どうしてもすぐに行く気にはなれなかった…。
仕事をギリギリまでこなし、周りの心配を背中いっぱいに受け、やっとの思いできた…。
聞かなくては。
そう思い直し、再び医師に向き直りました。
「お話、してもいいですか?」
「…はい。」
医師の話は…。
「まず、鎮静剤の注射を使用するかどうか。
これは、ご本人とご家族の了承が必要です。
鎮静剤を使用すると、痛みを抑えられますが、強い痛み止めなので、本人の意識はどんどんなくなっていきます」
……意識が、なくなっていく……
その言葉と、父の、あの辛そうな状態がシンクロしました。
「次に、蘇生措置法をどうするか。
心臓マッサージ等を行うか、自然に任せるナチュラルケアにするか…これも、ご本人とご家族のご希望をお伺いして行います」
…………
もう、何も言えませんでした。
そんな状態なのか……つい、先週、居宅介護の認定調査を受けた父が…。
目の前が真っ暗になりました……。
「そして、緊急時に面会される方が、ご家族以外にいらっしゃる場合、あらかじめご本人とのご関係と、人数を教えてください。」
…………こくり。
頷くことしかできませんでした。
「今お話したことを、すぐにお返事ください。
どうされますか?」
今すぐにって、今聞いたばかりの話を…
どうやって、決めろと……。
「主治医の先生にはお話していますが、母がひとりでは病院に来れない体なので、自分が家族の代表でこういったお話を聞いています。
自分ひとりでは決められません。
家で、母と話しあってお返事させてください。」
こんな、こんな大事なこと、母にも話せず返事のしようがない…。
急がされてるようで、とてもやるせない気持ちになりました。
そんなに、父を、一体この医師といい、病院といい…!何なんだ……
怒りを、悲しみを、悔しさを、入り混ざる複雑な思いをなんとか抑えて自分は訴えました。
「…そうですか。わかりました。それではお母様とご相談の上、遅くとも明日までにお返事ください」
……明日……
「自分は、会社を早退してこちらに来ているので、一度自宅に帰って、それから母に話をしに帰ります。」
「では、今日もう一度来ていただくことは無理ですか?」
……もう、17時を過ぎている…。
どんなに急いでも、母に会えるのは21時近くになってしまう……。
「今夜、お電話か、明日午前中に伺います。それでもいいですか?」
「わかりました。
では、明日いらっしゃる場合は、すぐにご本人に面会できるように受付に伝えておきますので、受付にその旨を伝えてください。」
本来、面会は午後から。
これは、本当に、緊急事態……。
身体全体で、その重みを感じました。
……頭の整理が出来ない。
長い医師との話を終え、
この日、個室に移された父に、やっと会いに行けました。
ナースステーションを横切って奥へ…。
はじめて踏み入れる場所。
今まで父がいた病棟とは、明らかに雰囲気が違いました。
父が、そこに居ました。
「…わりぃな……」
口癖の、そのひとことも、やっとのことで言う父。
あぁ、なんて辛そうなんだ……。
「父ちゃん、一旦自宅に戻って荷物持って、母ちゃんに話に行くから、今日は長居できない」
「…わかってる、申し訳ない…」
普段どおり、一時間位は話をしたいのに…
それも、許されない。
出そうな涙をなんとかこらえ、また来るから。
といい残し、病室を、病院をあとにしました。
母には、電話で一度自宅に戻ってから行くとだけ話し、電車に乗り込みました。
台風の日。
自分の心を、そのまま表しているかのような、荒れた天気…。
顔を見られたくなくて、サングラスをして、今にも出そうな、それでも少し出てしまう涙を隠しながら……。
(続く)