変わっていく、家族〜その67〜 | ぽんこたつ欲しいみかんの毎日気分は凸凹~生きてるからこそ~

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母の介護、父の死をきっかけに2016年にうつ病になったことから、転職を繰り返し、仕事社会から離れて今は生活保護で暮らしています。家族のこと、日常の出来事、病気やメンタル、伝えたいことや空想、情報など思うまま綴るまとまりのないブログです。

今日を、迎えられたことに、感謝。

 


過去のことを振り返るブログを書いています。


ご興味のある方は読んでみてください。





(続き)

引き続き、泌尿器科での入院を希望し、介護認定調査を終えた父。

もうこれ以上、父の気力と体力を奪わないでほしい…。

家に帰れる日がくるのか?

不安ばかりの日々…。


母も、自分も、そして妹も、見守ることしかできない日々…。

父は、携帯での電話も、メールもできないほどに衰弱していました。

母にとっては、父の様子を唯一知る手段。

それも出来ない…


自分は、仕事の帰りに、土日に病院と実家を行き来し、両親の様子を伝えました。

お互いがお互いを…。

しかし、父は、気力をそぎ取られ、辛い、という言葉を連発するようになっていました。



そして。

介護認定調査から5日後。

病院から緊急呼び出しが……。


父の容態が芳しくなく、すぐに来てほしい…と。


自分は、上司に早退の許可をもらい、母に連絡し、病院に向かいました。

いつもの主治医とは違う、医師が話をしたいと、別室に呼ばれました。


急な事で、心の準備が出来ていない自分。

急いで来たこともあり、呼吸も、気持ちも整えることができないまま…。


その医師は、現在の治療方法と、父の様子を話しました。

「既に、痛み止めの貼り薬が効かなくなっています。 



「そして、肝臓に更に転移が確認されました」


………………。


「父は、食事はもう出来ないのでしょうか……」

やっとの思いで出た言葉がそれでした。

「食べ物の通る管というか道に、腫瘍が飛んでいます。もう、食事なんて出来る状態ではないんです。主治医から説明はなかったのですか?」

知らなかったの?というような表情の医師…。


何度も、この別室で説明を聞いてきた。

でも、食事が出来ない理由、今後も出来ないなどという説明は一切ありませんでした。

そのことを医師に伝えると、

「まぁ、そういうことです。ので……」


……!!!


な、なんて……!
いつもいつも……!


非情にしか思えない、主治医や、この医師…。

ひとりひとりの患者に、いちいち情をかけていたらとても務まるものではない…。

頭ではわかっていても、目の前にいる医師が、主治医が……こんな人たちに父を預けてきたことを、悔しくて、悲しくて……。


「それで来ていただいたのは……」

もう、何も聞きたくない……。

これ以上、父を苦しめないで!


自分は、何もかも投げ出して逃げ出したい思いに駆られ……

一瞬……気が遠くなりました。


次の言葉は聞きたくない……


もがいても、もがいても、どうしようもないことなのに………




(続き)

医師の話を聞かない訳にはいかない。

母に伝えなくては…。


この日、緊急呼び出しを受け、どうしてもすぐに行く気にはなれなかった…。

仕事をギリギリまでこなし、周りの心配を背中いっぱいに受け、やっとの思いできた…。


聞かなくては。

そう思い直し、再び医師に向き直りました。

「お話、してもいいですか?」

「…はい。」


医師の話は…。


「まず、鎮静剤の注射を使用するかどうか。
これは、ご本人とご家族の了承が必要です。

鎮静剤を使用すると、痛みを抑えられますが、強い痛み止めなので、本人の意識はどんどんなくなっていきます」


……意識が、なくなっていく……

その言葉と、父の、あの辛そうな状態がシンクロしました。


「次に、蘇生措置法をどうするか。
心臓マッサージ等を行うか、自然に任せるナチュラルケアにするか…これも、ご本人とご家族のご希望をお伺いして行います」


…………


もう、何も言えませんでした。

そんな状態なのか……つい、先週、居宅介護の認定調査を受けた父が…。

目の前が真っ暗になりました……。


「そして、緊急時に面会される方が、ご家族以外にいらっしゃる場合、あらかじめご本人とのご関係と、人数を教えてください。」


…………こくり。




頷くことしかできませんでした。


「今お話したことを、すぐにお返事ください。
どうされますか?」


今すぐにって、今聞いたばかりの話を…

どうやって、決めろと……。


「主治医の先生にはお話していますが、母がひとりでは病院に来れない体なので、自分が家族の代表でこういったお話を聞いています。

自分ひとりでは決められません。

家で、母と話しあってお返事させてください。」

こんな、こんな大事なこと、母にも話せず返事のしようがない…。

急がされてるようで、とてもやるせない気持ちになりました。


そんなに、父を、一体この医師といい、病院といい…!何なんだ……

怒りを、悲しみを、悔しさを、入り混ざる複雑な思いをなんとか抑えて自分は訴えました。


「…そうですか。わかりました。それではお母様とご相談の上、遅くとも明日までにお返事ください」

……明日……

「自分は、会社を早退してこちらに来ているので、一度自宅に帰って、それから母に話をしに帰ります。」

「では、今日もう一度来ていただくことは無理ですか?」


……もう、17時を過ぎている…。

どんなに急いでも、母に会えるのは21時近くになってしまう……。



「今夜、お電話か、明日午前中に伺います。それでもいいですか?」


「わかりました。

では、明日いらっしゃる場合は、すぐにご本人に面会できるように受付に伝えておきますので、受付にその旨を伝えてください。」


本来、面会は午後から。


これは、本当に、緊急事態……。

身体全体で、その重みを感じました。



……頭の整理が出来ない。

長い医師との話を終え、

この日、個室に移された父に、やっと会いに行けました。


ナースステーションを横切って奥へ…。

はじめて踏み入れる場所。

今まで父がいた病棟とは、明らかに雰囲気が違いました。


父が、そこに居ました。

「…わりぃな……」

口癖の、そのひとことも、やっとのことで言う父。

あぁ、なんて辛そうなんだ……。


「父ちゃん、一旦自宅に戻って荷物持って、母ちゃんに話に行くから、今日は長居できない」

「…わかってる、申し訳ない…」


普段どおり、一時間位は話をしたいのに…


それも、許されない。

出そうな涙をなんとかこらえ、また来るから。

といい残し、病室を、病院をあとにしました。



母には、電話で一度自宅に戻ってから行くとだけ話し、電車に乗り込みました。

台風の日。

自分の心を、そのまま表しているかのような、荒れた天気…。

顔を見られたくなくて、サングラスをして、今にも出そうな、それでも少し出てしまう涙を隠しながら……。


(続く)