金原亭駒三 | 古今亭志ん輔 日々是凡日

金原亭駒三

$sinsukeのブログ

塀は、自宅の窓と同じ高さにあった。塀の上を、我が物顔で通る猫を、男は不愉快に思っていた。いつしか、男は猫に敵意を抱くようになった。男は銃を構えた。ジッと狙いを定めると、ゆっくりと、呼吸なりに引き金を引いた。エアガンの弾は、猫の背中を滑ると、あらぬ彼方に飛んで行った。猫は何事もなかったかのように、それでも、男を横目で睨むと、去って行った。この瞬間、男は復讐の鬼と化した。その日の男は沈着だった。塀の猫は、油断していた。横向きの顔が、いつもより長かった。まるで男を小バカにしているようだった。男と猫は、真正面から見合う形になった。ニヤッっと笑った男は、引き金を引いた。弾は、猫の湿った鼻に正面から当たった「ギャオッ」一声残して、猫は逃げ去った。男は満足気だった。しかし、猫は翌日もやって来た。その目は妖気を帯びていた。「フン、懲りない奴め」男は呟くと、弾丸を発射した。放たれた弾は、塀に当たると、真っ直ぐ男目掛けて飛んで来た。弾は男の目に命中した。「どうしてこんなことになったんですか?」医者に聞かれても、何も答えられなかった。「なにはともあれ、眼鏡を掛けていたから良かったようなもんの、そうでなかったら失明していましたよ」医者の目が、猫のそれのように光っていた。