柳家 〆治 | 古今亭志ん輔 日々是凡日

柳家 〆治

$sinsukeのブログ

「あんのぅ、弟子にすてけんねが」小三治師匠の家の前に、入門志願者が立った。「おら、弟子にすてもらいで」「駄目だな、そんなに訛っちゃあ噺家にはなれないよ」「へっ」「そんなに訛るんじゃあ、とてもじゃないけど、噺家は無理なんだ」「はぁ・・・」「そんなに気落ちするんじゃないよ。今、なにやってんだ」「新庄信用金庫さ、勤どめで」「ああ、そこにいなさい。それの方が良いに決まってる」「辞めでしまっで・・」「・・・」「行ぐ所はねえ」「かといって、家に入る訳には行かないな、兎に角、訛がきつ過ぎる。もし、その訛が取れたなら、弟子にしてやるよ」「!」一年が、あっという間に過ぎた。電話が鳴った「ハイ、小三治です」「すみません、お忙しい所申し訳ありませんが・・・」受話器を手にしていたのは、小三治師匠だった「ハイ、なにかご用?」「ええ、弟子にしていただきたくって」「いや、今弟子は取ってないから」「いえ、私です。去年の今頃、入門志願に行った者です」小三治師匠は耳を疑った「ひょっとして・・?・・」「ハイ、あの時の新庄信用金庫に勤めていた者です」「まさか・・」小三治師匠に、新しい弟子が誕生した。小りたと名乗るその弟子が、間もなく馬生師匠の背中を、腰板で刺すことは、まだ誰も知らなかった。