岡山県備前で作陶されている山本雄一さんの茶碗です。

須恵器の流れをくむ備前焼は、釉薬をかけない焼締めです。備前は日本では最も古い陶器産地の一つと言えます。

備前焼の長い歴史の中で、その焼色は様々造り出されています。それが焼かれる過程でいろいろ組み合わされ、多様な景色をみせてくれます。

代表的な焼色としては、胡麻、かせ胡麻、牡丹餅、玉垂れ、銀、火(緋)襷、さんぎり、緋色、青備前、石はぜ……。

備前焼の最大の面白さは、火の勢いが造りだした焼色の自然の景色でしょう。

この茶碗の景色はうっすらと光を反射する銀の焼色です。微妙なので写真ではうまく出ないのが残念です。
写す工夫をすれば、きっと銀の良さが伝わるのでしょうが。

しかし、この茶碗の見せどころは、形です。
山本雄一さんの轆轤(ろくろ)の技術が凝縮された、技がみえます。
高台から立ち上げる角度と均一さ、口の造りは絶妙で、安心さを感じさせてくれます。手にすると左手のひらの上に、ピタッと吸い付くようにのります、傾けても右手にしっくりと馴染みます。
手にした瞬間に、口をつけた瞬間に様々感じる茶碗です。
写真でも形の絶妙さが伝わるといいのですが。

好みとはいえ、形で納得させてくれる茶碗が少ない中、この茶碗は  形を楽しませてくれる茶碗です。
「形を楽しむ」「飲みやすい茶碗の形」というのも茶碗を楽しむ大事な要素だと、あらためて感じさせてくれます。