10年ぶりに高校の先輩にあった。10年ぶり、と言われたから多分、そのくらいの月日がたっているのだろう。
 2つ先輩である。大学も同じだった。向こうは2年浪人し、私は1年だから、ひとつ追いついた。2浪のわけは、目指す大学がなかなか難関だったからだが、うわさによれば、遊んでばかりで、とても合格できるような生活ではなかったらしい。知っている彼であるから、想像に難くない。
 高校のときから、彼には親しい友人がたくさんいたが、なかでもKさんは、親友と呼んでいい間柄だった。Kさんの弟と私は同学年だが、弟より兄であるKさんのほうが魅力的だった。当時は、先輩のほうがだんぜんかっこよく見えたのも確かなことだが。
 大学のとき京都に行こうとした私に、「おまえ、Kの下宿に泊まれ」と先輩は言った。深草に下宿があった。ただ、この人、女癖が非常に悪く、先輩は事前に「こいつに手を出したら承知しない」旨の手紙を書き送ってくれた。
 そんなこんなで仲良くなり、京都から夜行で帰ったら私の下宿に立ち寄ってくれたりした。つまりは、泊めてくれということ。お行儀はよかった。
 大学を出て、しばらくは、こちらでアルバイトをしていた。就職しなかった理由は知らない。ゆくゆくは田舎で家業を継ぐつもりだったのだろうか。バイトでお金が入ったら、ご馳走してくれたり、映画を観につれて行ってくれた。

 私は、卒業の翌年結婚したが、その以前から徐々に疎遠になってしまった。それでも、時に思い出すような人だった。
 彼が、深刻な病だと聞かされたのは、冒頭の先輩と10年前に会ったときではなかったろうか。鬱が高じて、仕事も辞め、奥様の実家に身を寄せているらしい、そんな話だった。親友である先輩にも会えないような精神状態だったという。
 そして・・・。その話を聞いた頃(つまりは10年前)、Kさんはすでに他界していたのだと先輩は言った。数年前、もう七回忌も終えた後に教えられたそうだ。
 どんなにかやるせなかったろう。なにも告げずに逝ってしまった。

 季節はいつか。その日はなにが起きていたのか。晴れていたのか、雨だったのか。亡くなった原因はなんだったのか。なにひとつ知らせないままに。どこに眠っているかも定かでないと言う。

 京都でしたたかに酔って、夜道をふらふらと一緒に歩いた。あれは夏の日ことだったなあ。もう遠い遠い夏の。