熟れる一日 (吉野 弘)

赤い水瓜の内側のような
夕焼け。
こんなに良く熟れる夏の一日もある。

空にいらっしゃる方が
大きなスプーンで
ひと掻きずつ
夕焼けを
掬って 召しあがるのか
赤いおいしそうなところが
ゆっくり 減ってゆく。

暑かった昼のほとぼりのさめないまま
たちこめる
青い暮色。
空の高いところに
かすかに赤い横雲が一筋
食べ残された風情で。