「かぜのひきかた」 辻 征夫

こころぼそい ときは
こころが とおく
うすくたなびいていて
びふうにも
みだれて
きえて
しまいそうになっている

こころぼそい ひとはだから
まどをしめて あたたかく
していて
これはかぜを
ひいているひととおなじだから
ひとは かるく
かぜかい?
とたずねる

それはかぜではないのだが
とにかくかぜではないのだが
こころぼそい ときの
こころぼそい ひとは
ひとにあらがう
げんきもなく
かぜです

つぶやいてしまう

すると ごらん
さびしさと
かなしさがいっしゅんに
さようして
こころぼそい
ひとのにくたいは
すでにたかいねつをはっしている
りっぱに きちんと
かぜをひいたのである


 「私が悲しいといったら、それは人間が悲しいといっているのだといえる地点にまで、詩を書くものは行かなければ行けない」と詩人は言ったそうだ。
 やわらかい言葉に、あるいは、悲しみも救われる?かもしれない。つきつめてばかり、では苦しい。