ぼくが消えてしまうところが
 この地上のどこかにある
 死は時の小さな爆発にあって
 ふいに小鳥のようにそこに落ちてくるだろう

 その場所はどんな地図にも書いてない
 しかし誰かがすでにそこを通ったようにおもわれるのは
 その上に灰いろの空が重く垂れさがっていて
 ひとの顔のような大きな葉のある木が立っているからだ
 あなたは歩みを速めて木の下を通りかかる
 そしてなにかふしぎな恐れと温かな悲しみを感じる
 ぼくの死があなたの過去をゆるやかに横切っているのだろう

 春雨がしめやかに降りだした
 いますべての木の葉が泣きぬれた顔のように
 いつまでもじっとあなたを見おろしている

(嵯峨信之)