落ちてきたら
 こんどはもっと
 高く 高く 打ち上げようよ


 ひっぱたいたら、破れるからね。掌にくぼみをつくって、そっとそっと打ち上げる。
 ふくらませるも、優しくさ。静かに息を吹き込んで。
 
 だって、きれいな願い事。
 高く 高く 打ち上げようよ
 何度でも 何度でも 打ち上げようよ。

 
「出発」

どこか遠くのほうから見ていたい
感動している自分を
感動して我を忘れてとんでゆく自分を
どこか遠くのほうから見ていたい

息を切らしてしまってはいけない
よそ見をしてはいけない
心ひそかにそう念じながら
どこか遠くのほうから見ていたい

あおいじつにあおい
その遠くの空の彼方へ
今はそれだけが私の仕事だ
荒々しく私は私を投げつける
紋白蝶のように軽々と行ってしまうようにと
眼をとじながら私は私を投げつける
足元に落ちて高雅な陶器のように砕けないようにと

(黒田 三郎)