「余命宣告されました。4~9ヶ月。心の整理をします」。
 去年のこの頃送られてきたメールの内容に、意味を図りかねた。くも幕下出血から奇跡的に生還し、ようやく旅も許されて、水を得た魚のように飛び回り始めた頃。だって、全身くまなく検査もされてもう大丈夫の太鼓判を押されたばかり。
 
 キューブラー・ロスの本をじっくり読んでくれ、と。
 「私は自分でも驚きましたが、すでに第五段階の受容のステージにいます。すべてを受け入れます。嘆かずに。時間はまだまだたっぷりあるからね」。

 先立つ10月。久々に講演をするから聞きにこない?と誘われた。秋の京都はいいと思うよ。行く気でいたが体調が悪くなり、ドタキャンして、ついに生身の彼とは会えないままだった。
 
 もう、あれから一年。

 「生きたように死んでいきたい」。
 無為自然、それが信条。奥様にあて、手紙のように日々の記録を遺されたという。

 なぜか、私の手元には、彼の卒論原稿がある。テーマは明恵(みょうえ)。生涯インドに渡ることだけを夢見ながら、ついに果たせなかった。
 対して、友は存分にインドを楽しんだ。
 
 幾山河越え去りゆかば寂しさの果てなむ国ぞ今日も旅行く