実家では「水炊き」というと、ハゲかタラ。ときにはそれにハマグリも加わった。
父は大変な偏食で、野菜は白和えかヌタくらいしか口にしない。肉もすき焼きだけ。徹底した魚派で、それも必ず刺身があって、その上に煮魚か焼き魚。朝も必ずメザシか鮭がなくてはダメで、前夜の煮魚の煮こごりなども好んでいた。そういう人だから、昼食も外食をいやがり、勤めの間は弁当を持参した。
三食、魚の献立だから、目先を変えるのに母はなかなか苦労したと思う。
そうして育ったものだから、結婚して義母が今夜は鍋にしようとメインに豚肉を用意したとき、一体なにかといぶかった。夫に聞くと、水炊きだと言う。豚肉で?
我が家で豚というと炒め物かやきそばくらい。どうも父の影響で、豚肉というのをあなどっていたようだ。ところが食べてみると、実においしい。いくらでも食べられる。魚の場合は野菜ほど量を入れないが、豚肉は山盛り用意されてもいる。目からうろこだった。
それからは、豚肉とホウレンソウだけの「常夜鍋」だの豚とミズナの「ハリハリ鍋」、これも豚を主体にした「キムチ鍋」と、鍋はたいてい豚肉となった。しゃぶしゃぶも豚のほうの出番が多い。
博多で、鶏の水炊きを食べたときも感動したなあ。あれは、随分昔、友人夫婦と私たち夫婦で博多どんたくを見に行った折のこと。白濁した鶏ガラスープの中に、骨付のぶつぎり肉。スープが薄くならないようにと白菜でなくてキャベツだったのも驚き。柚子胡椒なるものも初めて知った。
ところで、いつから「ポン酢」は瓶で売られるようになったのだろう。子どもの頃は水炊きのときは、柚子をたくさん絞らされたものだけど。すだちの時もあったな。
子どもの頃、母と買い物に出たとき、八百屋で近所の奥さんが「すき焼きのタレでも売っていればいいのに」とつぶやいていた。その奥さんが店を後にすると、残っていた客が口をそろえて、「好き焼きなんか、砂糖と醤油に酒さえあれば出来るのに、あきれたもんだ」。それが忘れられないのは、その人が辺りでは珍しいほど化粧が濃くて、”浮いて”しまうような格好をいつもしていたからだ。香水の匂いもきつかった。私と同級生の息子があったが、離婚したという噂もあって、そうだとすれば着飾る事情もあったのだろう。そんなあれこれが辛辣に狭い世間の目をひきつけていた。そういう時代のそういう田舎。
あれから何年たったのか。今では好き焼きのタレだって商品として売られている。彼女には先見の明があったのかも知れない。
水炊きから話は逸れてしまったけれど。
父は大変な偏食で、野菜は白和えかヌタくらいしか口にしない。肉もすき焼きだけ。徹底した魚派で、それも必ず刺身があって、その上に煮魚か焼き魚。朝も必ずメザシか鮭がなくてはダメで、前夜の煮魚の煮こごりなども好んでいた。そういう人だから、昼食も外食をいやがり、勤めの間は弁当を持参した。
三食、魚の献立だから、目先を変えるのに母はなかなか苦労したと思う。
そうして育ったものだから、結婚して義母が今夜は鍋にしようとメインに豚肉を用意したとき、一体なにかといぶかった。夫に聞くと、水炊きだと言う。豚肉で?
我が家で豚というと炒め物かやきそばくらい。どうも父の影響で、豚肉というのをあなどっていたようだ。ところが食べてみると、実においしい。いくらでも食べられる。魚の場合は野菜ほど量を入れないが、豚肉は山盛り用意されてもいる。目からうろこだった。
それからは、豚肉とホウレンソウだけの「常夜鍋」だの豚とミズナの「ハリハリ鍋」、これも豚を主体にした「キムチ鍋」と、鍋はたいてい豚肉となった。しゃぶしゃぶも豚のほうの出番が多い。
博多で、鶏の水炊きを食べたときも感動したなあ。あれは、随分昔、友人夫婦と私たち夫婦で博多どんたくを見に行った折のこと。白濁した鶏ガラスープの中に、骨付のぶつぎり肉。スープが薄くならないようにと白菜でなくてキャベツだったのも驚き。柚子胡椒なるものも初めて知った。
ところで、いつから「ポン酢」は瓶で売られるようになったのだろう。子どもの頃は水炊きのときは、柚子をたくさん絞らされたものだけど。すだちの時もあったな。
子どもの頃、母と買い物に出たとき、八百屋で近所の奥さんが「すき焼きのタレでも売っていればいいのに」とつぶやいていた。その奥さんが店を後にすると、残っていた客が口をそろえて、「好き焼きなんか、砂糖と醤油に酒さえあれば出来るのに、あきれたもんだ」。それが忘れられないのは、その人が辺りでは珍しいほど化粧が濃くて、”浮いて”しまうような格好をいつもしていたからだ。香水の匂いもきつかった。私と同級生の息子があったが、離婚したという噂もあって、そうだとすれば着飾る事情もあったのだろう。そんなあれこれが辛辣に狭い世間の目をひきつけていた。そういう時代のそういう田舎。
あれから何年たったのか。今では好き焼きのタレだって商品として売られている。彼女には先見の明があったのかも知れない。
水炊きから話は逸れてしまったけれど。