開けた窓から、湿り気を帯びた風が入ってくる。少しひんやりとして気持ちがいい。
 静かだ。お日様がダンスしていないから、内も外も実に静かである。
 私は、退屈極まりない本を読んでいる。先日図書館で借りてきた一冊。ところが、今日のような薄曇りの空に、この退屈さが不思議なほどに似合っている。
 本を読むというより、「退屈」を読んでいる。これも、静かさを構成している要素のようだ。

 息子は今日、ギターをかき鳴らしもしない。
 昨日、オープンキャンパスをかねて、文化祭が行われ、後輩の演奏を観に行ったはいいが、財布を失くして帰ってきた。気づいたのは、帰宅後。免許証も入っているから一人では戻れず、私が車で大学に引き返した。自分の動線を思い出せる限り辿ったようだが、見つからず。夕方からは街でのライブが入っているし、じっくり探す猶予もない。
 折悪しく、今月末から行くアメリカ旅行のチケット代を払うつもりで、結構な金額をおろしたてときている。その他、クレジットカードやキャッシュカード、学生証・・・。
 出てこなかったら、まずは免許証を再発行してもらい、クレジットカードを止め、銀行に赴き・・・と考えただけで煩雑なあれこれが待ち受けている。誰かが拾って届けてくれますようにと願いながら、ライブハウスまで送ってやる。その後、学生部で落とし物として預かっている旨の電話が入り一安心。
 それで今朝、これまた車に乗せて受け取りに行ったのだが、残念ながらお金のほうは全額ではないものの、抜きとられていた。という訳で、意気消沈しているのだが、まあ、その他が無事だっただけよしとしよう。

 昨夕のライブは某楽器メーカー主催でコンクールも兼ねていたようで、なんとも驚くことにグランプリをとり、表彰状を貰って帰ってきた。そうとうは知らず、たまたま出ただけだったのに、7月に行われる地区大会への出場権を獲得。旅費・宿泊費も向こう持ちなのだそうだ。
 しかし、その頃、息子はアメリカ。リードギターに代役を立ててもいいかと尋ねたところ、「リードがよかったから、それでは無理だ」と断られたらしい。
 「まあ、次はハードルが高いから、どうせダメだろうし」と、メンバー一致で棄権に決定。とは言え、かけられた言葉は、随分と嬉しかったようである。出かけたときとは、うってかわった表情で戻ってきた。
 そして、今朝に至り。

 それにしても、今日は実に静かである。
 キーボードを打つ音さえもいつもより低く聞こえてくる。では、再び退屈な一冊へと引き返すことにしよう。