「礼節」

いまは死者がとむらうときだ
わるびれず死者におれたちが
とむらわれるときだ
とむらったつもりの
他界の水ぎわで
拝みうちにとむらわれる
それがおれたちの時代だ
だがなげくな
その逆縁の完璧において
目をあけたまま
つっ立ったまま
生きのびたおれたちの
それが礼節ではないか

(石原吉郎/『ユリイカ』より)