別に早く起きなくてもいいのに、スズメが一斉にチュンチュン鳴いてかすかに目が覚めた。
 ときどき、数羽がチェリーのエサを漁りにくる。そしてときどき大群でやってくる。バタバタと飛び立つ音も結構大きい。

 うつらうつらしているとスズメに替わって、違った鳴き声が聞こえてきた。
 くぐもっているが、なにかを繰り返し言っているように聞こえる。「ブッポソウ」とか「テッペンカケタカ」みたいなものだ。
 じっと耳を傾けていると「セイシンノショウジョウ セイシンノショウジョウ」と聞こえる。

 「セイシンノショウジョウ セイシンノショウジョウ」
 「精神の症状 精神の症状」?
 これを、5~6回繰り返すと、いきなり「セイ」とかのキレの悪いところでやめる。落ち着かない。
 しばらくするとまた始まる。
 「セイシンノショウジョウ セイシンノショウジョウ セイ」
 「精神の症状 精神の症状 精・・・」
 
 ほっといてくれよ・・・と思いつつも気をとられ、寝る気が失せてしまった。
 窓から外を見る。斜め向かいの立派な庭のあるお宅のほうから聞こえてくるようだ。まさか、そっちに向けて石を投げるわけにもいかないし、パジャマ姿で「お宅の庭で「「精神の症状」と鳴いてる鳥をなんとかしてもらえませんか」と訴えるわけにもいかない。
 「精神の症状」を疑われる。
 
 確かに調子がいいとは言えないが、鳥の鳴き声で私のほうが捕捉されたのではたまらない。
 
 車で走っていて、前の車のナンバーを足し算しはじめると、とまらなくなることがある。
 子供の頃の横断歩道の歩き方とかに、なにか法則はなかっただろうか? 
 あるいは、何かを数えながらでないと歩けないとか、小さな強迫観念のようなもの。病的ではないが、無意味さを承知しながら、頭から離れてくれないもの。
 
 四つ葉のクローバーを捜すような感覚にも似てる。
 高校の同級生は、なんで掌は閉じるのだろうとじっと考えているウチに、突然、掌の閉じ方がわからなくなった。自律神経失調症と診断された。


 制服は嫌い。チャイムも嫌い。ぴたりくっついたハイネックが嫌い。ジャストサイズのシャツも苦手。ガードルも嫌い。ストッキングも履けない。
 拘束されているような感じが苦しい。想像するだけで息が詰まりそう。


 夏休みもあと数日か。
 思えば、生涯で一度も夏休みのラジオ体操に参加しなかったなあ。休み前に、信用金庫とか郵便局の名前入りの、首からかけるハンコカードを貰うけど、すぐにゴミ箱。せっかくの休みなのに、休み前より早く起きるなんて・・・どう考えてもイヤだ。

 息子。やはり一度も夏休みのラジオ体操に参加してない。
 「お願い、そんなことのために早く起こさないで」。
 親子で願いが一致。夫が子供時分に行ったとも思えないし、家族揃って、夏休みの「ラジオ体操」をしたことがない。日本の夏の風景をひとつ知らないという訳だ。
 ついでに、家族揃って、成人式にも縁がない。

 こういうことには、全く強迫観念ないんだけど・・・。
 「精神の症状」?