あの日
僕は真紅のバラで花束を作った
少しほころんだ蕾ばかりで

はじめは大きな花束をと思ったけれど
君の困った顔が見えるようで
ささやかなブーケに作り直してもらったのだ

花屋の女主は
君のことを大層気に入っているから
真紅のバラは僕が注文したより少し数が多くなった

次の時、僕は真っ赤なチューリップばかりで
花束にした
君は花の名をほとんど知らないのだから
せめて君の好きな色を集めようと
僕は僕なりに頑張っているのだ

その次は 黄色いチューリップだけで

次には、色とりどりのフリージアで
ほら、これは、虹の束なんだよと

庭のミントを山のように摘んで束にもした
ミントの香りは、いつかの夏のある日のことを
ぼんやりと想起させるのだが
僕にはその日の出来事が、まだ思い出せないままでいる

僕は
君に花を届けることしかできないのだろうか
僕の心は風が吹くたび飛んでいってしまうから
うまく束ねることができないのだ