僕らは一本の大きな樹に向かって
なだらかな川縁の道を下りていった
浅い夏の午後は始まったばかりで
川は銀色に光っていた

君は草の上に寝転んで
雲の流れを静かに眺めた
僕はそっと傍らに腰を下ろして
君との距離を考えた

僕には言葉もなかったし
ポケットには一冊の文庫本さえなく
君にあげられるものは何もなかった

「食事をしないか」と僕は君に尋ねた
「イヤ」と即座に返事がかえった

雲はゆっくりと流れていた

君は急に立ち上がると
「ありがとう」と一言残して
振り向きもせず消えていった