あの人は、僕の腕の中で
 「死んだっていいよう」「死んだっていいよう」
 と繰り返すのでした
 僕もかすかに雲のかかった月を眺めやりながら
 「死んだっていいよ」
 と言葉にせずにつぶやいたのです

 あの夜
 どこにも行き場がなかった僕たちは
 緑の露に濡れながら 多くのときをただ黙して過ごしました

 「死んだっていいよう」
 「死んだっていいよう」
 あのときの言葉が耳の奧から、今もときおり聞こえてきます

 さよなら
 さよなら

 僕たちの恋は終わり
 僕たちが見た朝焼けも 
 もう遠すぎて、すっかり色あせてしまいました

 さよなら
 さよなら
 
 気まぐれな風に頬をなでられながら
 ほんのりと熱いからだを抱きしめたときの あの寂しさよ
 僕はもう、誰かと夜明けの白い月を見ることはないでしょう
 
 さよなら
 さよなら

 僕たちの恋は終わり
 淡い影は 寄り添うこともないままに
 いまもあの場所に、ひっそりと取り残されています