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 切ない。
 夏の予感にわけもなく、寂寞とした思いがこみ上げてくる。
 ことに、青く晴れ渡った日の午後は、まるで気分が落ち着かず、涙すら滲みだすのだ。
 前世で、そんな日のそんな時頃に死んだのだと、占う人から聞かされた。
 それはどうだか知らないが、ただ無性に胸がざわつく。
 
 それでも
 夏に焦がれて、夏を待つ。

 昔、下宿屋の二階の部屋から、隣のクリーニング屋が見おろせた。窓に腰掛けて、飽きもせず眺めていたものだ。夏にはランニングシャツ一枚の主人が頭にタオルを被り、重そうなアイロンを動かしている。腰あたりまであるアイロン台は茶色に焼けて、日がな一日、ワイシャツにアイロンを当てる。
 表の古びたガラス戸を開け放ち、錆び付いた扇風機を回しながらの重労働である。
 その光景が好きだった。

 黄昏時になると、昼間の暑さを留めた空気がふんわりと漂う中、クリーニング屋の向こうには、夕焼けに染まって黙りこくった街があり、路面電車がガタゴトと音をたてて往き交った。

 路面電車を見送るように、私は何度も夏を見送った。
 
 そしてまた
 帰らぬものを遠くに眺めやりながら
 夏を待つことの
 なんという切なさ。