オーソン・ウェルズが「火星人襲来」を放送する際、臨時ニュースで始めたため、聴取者に本物のニュースと間違われ、パニックを引き起こした事件。
 てっきりエイプリルフールのことだと思っていたが、調べてみると10月のこと。70年も前の。

 「火星人襲来」のことを思ったのは、「今日のお昼はパスタでも茹でるか・・・」とぼんやり考えていて、ある年の英国、BBC放送が行ったエイプリルフールのことを思い出したからだ。
 パスタつながりである。
 
 「イタリアではスパゲティの木の成育状態が悪く、記録的な不作になるものと思われる。そのため、今年のスパゲティは高騰し、庶民の口に入りにくくなるだろう・・・」。
 スパゲティのぶら下がった木をイタリア農民が恨めしそうに眺めているという映像に添えて、こんなコメントが流れるという傑作な作品であった・・・とある本で読んだ。

 スパゲティは小麦から作るものと分かっているはずなのに、驚くことに、多くのイギリス人が騙されたと言う。映像の見事さか、BBCへの信頼か。それよりも、私たちの脳は意表を突かれると機能不全に陥るのか。

 BBCはエイプリルフールに凝ったものを作るので有名だった。今はどうだろう?
 傑作のひとつを見つけた。題して「空飛ぶペンギン」。
 突如、南極から熱帯雨林まで飛んでいくペンギンたち。映像が出回ったから、ご覧になった方も多いだろう。ジョークに賭ける熱意に脱帽の映像。下記にアクセスすると見られます。
http://www.youtube.com/watch?v=Czr3escvvdg

 ところで、上述の話はてっきりライアル・ワトソンの『ネオフィリア』(ちくま文庫)にあったものと思いこんで、この際読み返してみた。しかし、なんど繰っても見つからない。おかしいなあ。

 あっと気づいた。あれは沢木耕太郎だ。とすれば・・・と数冊出して、目次を捜し、それとなく見当をつけてようやく探し当てた。
 『バーボン・ストリート』の一編「クレイジー・クレイジー」だ。胸のつかえが一気に下りる。

 余録として、ワトソンの本の中から、妙なるところを多少引用・・・。

 「チャールズ・ダーウィンの乗った船がホーン岬付近の島の水路に姿をあわらしたとき、原住民が反応らしきものを見せるまでにずいぶん時間がかかった。・・中略・・島民はビーグル号がまるで目に入らなかったらしい。船が彼らの想像を絶する大きさだったために、見えなかったのだ。」

 彼らにとって、巨船が現実のものとして見ることができる存在となったのは、手で触れ、裸足で甲板を歩き、その感触を味わう機会が与えられた後だったというお話。

 「視覚(サイト)よりも内なる目(インサイト)がわれわれには必要なのだ」。