「祝福」

君よ
一人で大きくなったような不遜な顔をしてはならない
そのいのちは君のもの、
ただひとり、君のものではないのであるから

誕生の記憶など、君にあろうはずはないのだが
あたたかないのちを抱きとった
幸福の傍らには
切ないばかりの悲しみも
ひっそりと横たわっていたのだよ

それは、君という新しいいのちの誕生が、
君につながる古いいのちを葬ってゆくことへの確かな予感
ほら、秋風に舞う木の葉のように
古いいのちは若いいのちにあとを譲らねばならないのだから

星たちの瞬きが遠い過去から来ているということを
君は知っているだろう
小さな光が
何万年も何十万年も、時としては億万年もの年月を経て
私たちの元へ届くように
君というひとりの人間も
無限の生と無限の死とに結ばれて
ようやくここにたどりついたのだ

あの日
生と死とが交差するのを垣間見ながら
人はそれを祝福と呼ぶのだと
私は、はじめて知った

君よ
生きるものの傲慢さにとらわれてはならない
そのいのちは
ただひとり、君だけのものではないのであるから