寒い、寒い。

 寒い、寒いな・・・と言ってたら、だんだん寂しくなって泣き出しそうになった。

 これは部屋を暖めねばならない。寒さは、寂しさをえぐり出すのだと知った。

寒い地に暮らすひとが部屋をガンガンと暖かくするのは、寂しさに浸食されないためでもあるのではないか。

 

 では暑いところは、寂しくないの? ついそんな余計なことを考えるのは悪い癖。だけど・・・う~ん、暑いところは寂しさよりも「切なさ」ではないか・・・。

 切なさは刹那にも通じて、たとえばラテンの狂騒的な音楽やエネルギッシュな踊りやらが、今一瞬のいのちの発露、輝きを求めているように感じられる。

 

 そんなことはさておいて・・・いまはこの寂しさだ・・・。

 そうだ、風呂を入れよう。たっぷりと熱いお湯をはって、肌をチリチリさせながらゆっくりと身を沈めるのだ。

 寂しいときは「たっぷり」とか「ゆったり」を努めて大事にすることだ。だって、心の奥が縮んでいるから。伸ばして緩めて広げてやるのだ。

 

 などと書いていると・・・

 え? 西村賢太さんが亡くなったという報。

 うそ。だって、石原慎太郎氏の訃報に際し新聞に寄稿されたのは、つい数日前のこと。

 

 芥川賞をとられた「苦役列車」は衝撃的な私小説だった・・・。

 それにしても「私が好んだ存命作家はただの一人もいなくなってしまった」と慎太郎氏を忍ぶ追悼文が絶筆となろうとは。

 享年54歳。ご冥福を祈るほかないけれど、ないけれど・・・。

 

 雪が止んだが、空は薄暗い。今日は空なんて見なくていい。

 一にも二にも体をいとうてやることだ。こころは・・・きっとあとからついてくるから。