寒い日が続きますね。
寒い夜にいただく鍋、我が家のブームは「塩おでん」。
たっぷりの鳥もも肉を使い、味付けは酒、塩、みりんのみ。
これがめっぽう美味しくて、残った汁は炊き込みご飯にしていただきます。これがまた美味しくて(以下略)。
ダイエット開始のホイッスルはまだ鳴らないようです。
みなさんはどんな1週間を過ごされましたか?
今週印象に残った1冊を紹介します。
井上 荒野さんの『ママがやった』です。
突然母親に呼びつけられ、実家の小料理屋へ向かうと、父親が死んでいた。母親が殺したのだと言う。姉二人と弟一人の三人姉弟は父親の死体を処理する相談をはじめる。いつもと変わらない様子の母が作った筍ご飯を食べながら、自分勝手で女性にだらしなかった父親にそれぞれが思いを馳せる。家族とは、男と女とは。愛情の形がそれぞれの思いに沿って浮かびあがっていく。
長女と小料理屋を営む79歳の母は、店の2階で72歳の父親と暮らしていました。子供たちが駆けつけると、その2階の布団の上で父親は死んでいました。
まさか本当に死ぬとは思わなかったんだけど、死ぬものなのねえ。びっくりしたわと母親は、全くびっくりしていない様子で言った。
計画的なものではないようですが、混乱したりヒステリックになることもなく至極冷静というか、いつも通りの母。しかも集まった三人の子供たちに対して
「あんたたち、お昼食べていくんでしょう」と母親は米を研ぎ始めた。
ええと、それどころではないのでは?と思いながらも子供たちもその筍ご飯を食べながら(食べるんかい)父親の死体処理の相談をします。警察に連絡を、と至極まっとうな提案をした弟に、姉たちはすかさず却下。年老いた母親を牢屋に入れると言うのか!苦労して私たちを育ててくれたというのに。そして心の中では、あの父親では殺されても仕方がないのではないかと呟いているようで、とうとう死体を遺棄することに。当の母親は全く他人事の様子で聞いています。
そして、家族それぞれが父親と関わった今までの自分を振り返っていきます。
母親と父親の出会い。独身で店を手伝っている長女の恋愛観。結婚して三人の子供を持つ次女。家事代行会社のパート職員として働き、ちょくちょく実家に帰ってはご飯を食べさせてもらっている長男末っ子。彼らから見た父親像とはどんなものだったのでしょうか。
写真家、イラストレーター、旅行記者、小説家と「自称」の職を転々とし、要は妻の稼ぎによって食べていた父。常に別の女の影があり、家には帰ってきたり、来なかったり。最近では付き合っている女性をこの店にまで連れてきていたという、だらしないクズ男。でも母親はそんな父親と別れるでもなく、ずっと共に暮らしてきていました。それが今になって、なぜ。
ふわふわといい加減な人生を送っていたけれど、付き合いのあった女性を大切に、そして家族を大切にしていた様子の父親。気まぐれに与えられた愛情は、必ずしも相手が望んだ形ではなかったようです。そうした望まぬ環境の蓄積が彼ら家族を歪ませていったのではないでしょうか。それにしても最後までこの一家には現実感というものが欠如しています。もっともしっかりとした現実感を持った人間は、案外死んだ父親だったのかもしれません。
しかし母親が父親を殺害し、全てを手に入れることのできなかった男の全てをこの手に入れた瞬間、はっきりとこの男とつながっていることを認識できたのかもしれません。人と人は相手の一部分のみを見て、そこを愛したり愛されているものなのかもしれない、見えない部分は互いにたくさん持ったままなのかもしれないと思う物語です。
〈今週 読了した本〉
『ケイトが恐れるすべて』
『ファイナルガール』
『不穏な眠り』
『妹の縁談 小間もの丸藤看板姉妹二』
『とるとだす』
〈現在 読書中の本>
『お師匠さま、整いました』
〈今週購入した本〉
なし
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https://shimirubon.jp/columns/1691046
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