京都へ旅行に行ってきました。暑かった~(^_^;)。
しかし、緑が多く、視覚的に涼しさを感じる場所がたくさん
ありました。それと、夜の灯りが抑えられていて、「夜は暗い」
ということを改めて気づかされたのが印象に残っています。
月の灯りが、街を照らしていてきれいでした。
みなさんはどんな1週間を過ごされましたか?
今週印象に残った1冊を紹介します。
朝倉かすみさんの『恋に焦がれて吉田の上京』です。
札幌で両親と弟、そしてハムスターの琵琶介と暮らす、23歳の
吉田苑美は、はじめて恋をした。相手は四十男のエノマタさん。
東京へ行った彼を追いかけ、ストーカーまがいのことをして、ただひたすらに彼のことを知ろうとするのだが。
勤めていたデパートの、広告ポスターの撮影の場で、エノマタさんに出会った苑美。交わした会話はほんのわずかでしたが、「この人いいな」という思いをずっと胸に秘め続けてきました。
学生時代からの友人で、しょっ中会うけれども互いに浮いた話ひとつない親友の前田からは、なんだそれ的な容赦ないツッコミを受けますが、エノマタさんが東京で働くことになったという情報を得ると、デパートを辞めて、彼を追いかけて東京へ飛び出します。でも片思いなんですけどね?すごいパワーですね。
苑美の面白いところは、行動がとても情熱的なのですが、色気もないし、相手に媚びたりしないし、むしろ同僚のアルバイトの女の子をかわいいなあ、いい匂いがするなあと感じていたり、その彼女に対して軽く嫉妬を感じたりしているにも関わらず、行動にも表情にも出さず、サッパリとしているのです。なんででしょうか。片思いだから?処女だから?
相手を憎んだり、貶めたりしないからでしょうかね。いかにも女らしい、それを武器に使うような女性と同じ土俵に立つことを諦めているのかもしれません。
苑美は、エノマタさんの職場近辺でアルバイトをしながら、彼のことを待ち伏せし、帰途に向かう彼と目が合わないように注意し、その姿を見ることができた日には、この上ない幸せを感じているようです。この辺はまったくもってストーカーだな、と思うのですが、ヤバイ感じはしません。そこまでやるなら話しかけちゃいなよ!とむしろ応援したくなるという。
親友の前田との会話も最高です。
「雪虫は飛んでいるかい?」「とっくのとうちゃんだよ」
とまるで落語を聞いているようなやりとり。20代の若い娘の会話ですよ。でも郷愁を感じさせる会話なんです。深刻になりすぎない
空気感というのも、読んでいて心地よいのです。
二人とも彼氏いない歴イコール生年数だけど、二十歳過ぎて自分と世間に対して現実的な目を持っているというところにも、説得力があります。あるいは、この現実的なある意味ドライとも言える
見解や物言いは、北海道っぽい、とも言うのでしょうか。
こうした現実的な価値観が、苑美の行動を粘着質ではなく情熱的に、相手への想いは強くありながら、相手と自分を冷静に見つめる客観性を持ち、普段は大人しいのに時折大胆な行動に出たりする彼女をとても魅力的に見せてくれます。
そうした苑美に対して、対照的なのがエノマタさんです。草食系であり、やさしく、付き合った女性はそれなりに大切にするけれども、自分のほうが大事な人物の様子。でもあからさまなクズでもない。
少しずつ、関係を深めていく苑美とエノマタさんですが二人の距離は縮まっても心の距離はどうなのか…と苑美でなくてもやきもきしてしまいます。
全くの片思いだった状態から、勢いだけでエノマタさんを追いかけてきた苑美が、恋を知り、ひととおり経験して大人になっていく。
最初の状態から比べると、上京してきた二年の間に、苑美には
実にさまざまな出来事が起こり、人間的にも深みが加わったように感じます。対するエノマタさんの変わらなさ具合に、苦笑したりして。この男は一生こんなカンジなんだろうなあと思わせます。
ガッと燃え上がりスパッと引く。サッパリとしているのに絶妙な熱さを持つ、笑いを交えながらも心にじわりと染み込んでいくような、
恋愛物語です。
〈今週 読了した本〉
『おそろし』
『太陽の塔』
『火口のふたり』
〈現在 読書中の本>
なし
〈今週購入した本〉
なし
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