今週印象に残った一冊

土曜日は運動会でした。

小学生の娘二人も、ＰＴＡでおてつだいの母も全力で駆け回った

一日でした。どちらもお疲れ様でした～。

みなさんはどんな1週間を過ごされましたか？

今週印象に残った1冊を紹介します。

柚木麻子さんの『奥様はクレイジーフルーツ』です。

奥様はクレイジーフルーツ (文春文庫)

家で仕事をするジュエリーデザイナーの初美、三十歳。
女性誌の編集の仕事をしている三十五歳の夫、啓介とは結婚して三年になる。夫婦の仲は良好だが、夜の営みが間遠に。欲求

不満でいろんなものに発情してしまう初美。夫婦愛とはセックスと

切り離されたものなのか。

仕事が忙しい、疲れている。こちらから誘っても、そうした言葉で夫に断られてしまう初美。最後にした時から数ヶ月が経ちます。そんな初美は同級生と浮気しそうになったり、義弟相手に妄想したり、浪人生を誘惑したりと自分の欲情を持て余して迷走しまくります。

ふっくらとした柔らかそうな身体に、大きな胸。隙がありそうな初美は、男性から見たら、とても魅力的なタイプ。ただし、寄ってくるのは後腐れない関係を求めるような男ばかり。若い頃はそんな男に引っかかって嫌な思いをしてきました。しかし、夫の啓介は今までの男と違い、誠実で優しい。結婚する前も後もそれは変わりません。しかし、夜の生活がない！のです。

初美から誘っても「疲れているから」と数回断られているうちに、

前回から数ヶ月がたってしまい、これってレスなのか…？と悩む

初美。同級生の男性と二人で飲む機会があり、ちょっとしたやり

とりから暴走しかけた欲情に危うく引きずられそうになるのですが…。

女性の性欲って改めて複雑なんだなぁと感じます。ただ快感を

得たい！やりたい！という部分もあるのかもしれませんが、決してそれだけではなく、その裏には「私には性的魅力がないのか」「女としての価値はあるのか」「このまま性交渉なしに何十年も二人でやっていけるのか」などなど、その胸のうちは何重にも苦悩が積み重なっているのです。

夫はもともと性的には淡白な人。でも初美のことは大切にしてくれます。レスになっても、それなりに二人が仲良くやっていて、それがかけがえのない時間となっていることが、事態をよりいっそう複雑化していきます。

周囲にはそうしたレスの夫婦関係に耐えられず、浮気を重ねる友人達もいる中で、妄想はしてもその先の罪悪感を想像して一線を越えることができない初美。でもモヤモヤしたものは残るのであって…。

初美のいじらしさ、性欲があらぬ方向へ暴走していく様子は可笑しくもありますが、物悲しさもあります。ジッと我慢しながら歳を重ねていき、これが夫婦のいい形なのよ…と自分を抑え込むようにも見える初美が気の毒になり、旦那さん、疲れてるなら休み取って
奥さんとホテルでも行ってあげて！！と言いたくなります。

互いの性欲や考え方、体力や環境。性生活は様々な要素がある中で成立する行為でありますが、問題が生じた場合、完全に互いを理解するのは不可能なんじゃないかなあとこの作品を読むと感じます。そのことを分かった上で、その先も相手と一緒にいたいと思うかどうか。それが夫婦というものなのかもしれないですね。

恋人期間を経て、縁があって夫婦となった二人。セックスももちろん大事なことですが、二人で重ねてきた時間も、それと同じくらい大切に思える夫婦であれば変化していく二人の身体や環境すらも楽しめる、最期まで共にいられる夫婦になれるのではないでしょうか。そんなことを考えさせられた作品でした。

〈今週読了した本〉