7月はとても暑い一か月でしたね。
外へ出かけるのにもかなりの覚悟が必要でした。
8月にはもうちょっと暑さが落ち着いてくれるといいなあと
思っています。
皆さんにとってはどんな1か月でしたか?
今月、印象に残った一冊をご紹介します。
村田 沙耶香さんの『消滅世界』です。
子どもが欲しい時は人工授精で授かるのが一般的。夫婦間での性行為は「近親相姦」とされ、人々の嫌悪の対象となる。両親の
性行為によって生まれた雨音は子どもの頃、母親から叩き込まれた「男女は愛し合って生まれる」という考えに嫌悪を示している。
やがて「家族」となる夫と暮らし、夫以外の人間やキャラクターに
対して恋愛をしていた雨音。しかし、夫婦で実験都市へと移住
してから、そんな日常が思わぬ方向へと変更していく。
「殺人出産」の前日譚とも言える本書。
説明できないような本能的な感情や行動を嫌い、家族にはどこ
までも綺麗で清潔で、安心できる心地よさを求める世界がここに
あります。
夫婦もそうした「家族」です。この世界では夫婦ではセックスしま
せん。それは「近親相姦」とされ、人々の嫌悪の対象になって
います。人によっては、女性であれば一度もセックスせずに、
子供を産むことも可能です。もちろん夫婦間でも性行為なしに、
妊娠・出産することもあり。子供を授かるということと性行為が
完全に別々になっているのです。
とはいえ、人間の性欲が完全に無くなる訳ではありません。
全く興味を示さないタイプの人間もいるようですが、やはり一定数の割合で恋愛や性行為をする人間たちがいます。夫婦で、それぞれに恋人を持ち、性行為は恋人と行う、というパターンも普通なのだそうです。
雨音と朔の夫婦は互いに恋人を持ち、互いの恋愛を応援したり、時には夫婦と恋人と共に食事をしたりして、仲良く暮らしていました。いつか子供が欲しいね、と話していた2人は、実験都市に行くことにします。
実験都市とは、人口を完全にコントロールしている街です。
ここでは男性も出産できるように、研究が進められています。
妊娠を希望する場合は申請書を提出し、受理されると人工授精を施します。生まれた子供たちはセンターで育てられます。
休日に公園へ出かければ、沢山の子供たちがいます。
幼児から小学生くらいの男女の男の子で、全て同じおかっぱの
髪型と服装。そして雨音たちは「おかあさん」です。大人の男女は老いも若きも、全ての子供にとって「おかあさん」なのです。
この様子に背中が寒くなりました。
子供を産むことが女性の特権ではなくなること。母性、という言葉が誰に対しても有効であること。これは一見いいことのようにも見えますが「我が子だからかわいい」という概念が一切ありません。
誰から生まれたのかわからない子どもを、ペットのように可愛が
る。そして、子どもたちには名前がありません。「子どもちゃん」と呼ばれているのです。子どもたちを管理している職員は、子ども
たちが自分は愛されているのだ、という認識が育つようにたくさん可愛がってあげてくださいね、と雨音たちに言います。
「おかあさん」も「子どもちゃん」も、個人であることを必要とされて
いません。完璧にコントロールされた世界で、コントロールされるがままに生きることは、人間の思考をマヒさせます。コントロールされることに快感すら感じるのかもしれません。
きれいなもの、説明がつくものをだけを大切にする世界。
そんな世界が排除しようとした、人間の本能とも言える愛することや性行為。個人に対してではなく、広い範囲に向けたことで、愛もマニュアル通りに与えられ受け取る側も決まった愛情を受け取ることになります。それは、とても綺麗で心地よいものかもしれませんが、柔らかく身を包み、だんだんと重さを増していくのでしょう。
昨日の世界は今日の非常識。今ある世界も、数十年後にはガラッと変わる可能性があります。自分が思っている、信じている「愛」や「家族」の概念は、長い歴史の中のほんの一部分にすぎないのかもしれない、と思わせる物語でした。
今月のレビュー結果
今月イラストレビューした本
25冊
ブログをはじめてからイラストレビューした本累計
580冊
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