傷つけるつもりなんて全くなかった。

ただ、お前を奪い返したくて…もう一度手に入れたくて…。

あんなことしなければ良かった。

 

「……のやろ……!!!」

 

潤「…痛い!!痛い!!……やめてぇ…!!」

 

「…黙ってろよ……!!」

 

そんな後悔が頭の中を巡る。

 

潤「おはようございます……。」

 

「………。」

 

冷たくするつもりだってないんだ。

でも、俺を見るお前の目は冷たくて…。

 

だって昨日、突然思ってもない言葉をお前が口に出したから…

 

 

冬が近づき、冷えてきた頃

俺と潤はいつもと変わらず、温かい食卓を囲み

いつも通り、いつも通り話をしていた。

 

潤「……………ごめん、しょおくん……俺、ほんとの彼氏がいるの。」

 

「……え?」

 

意味がわからない。

俺はお前のたった1人の彼氏で、誰よりも1番好きな人間ではなかったのか………?

 

「…何言ってんだよ……嘘つくなよ……」

 

潤「……嘘じゃないの、本当なの。」

 

潤は涙を流し始めた。

 

「………っ!!!」

 

椅子から立ち上がり

潤の胸ぐらを掴み無理やり壁へ押し付ける。

 

潤「……しょ……く…ごめ……っ……なさ……」

 

「………浮気か?…浮気だろ?俺以外に好きなやつができたの?」

 

潤「……………っ…しょおく「ふざけるな」

 

「俺がお前にどれだけ愛情を注いだと思ってる」

 

潤「……ごめ…っ」

 

「…………はぁ……」

 

俺は潤に手を出した。

 

殴ったり、蹴飛ばしたり。

俺の気持ちを無視した潤に。

苦しんでほしかった。

 

傷ついてほしかった。

 

潤「……痛いっしょおくんやめて……っ!!」

 

俺は潤が意識を失うまで続けた。

 

潤「………………。」

 

ぐったりとした潤を見た俺は我に返った。

 

俺の手で、俺の足で

潤を傷つけた。

 

涙が溢れてくる。

 

「………はぁ…はぁ……潤…ごめ…っ……」

 

潤の服のボタンを外す。

シャツを捲りあげれば、アザが何ヶ所にもあった。

 

「……救急箱……っ」

 

俺はすぐに手当した。

 

痛かっただろう、辛かっただろう。

 

自分がしたことは、とても酷く。

愛する人をこんなにも傷つけて。

 

「…もう……別れなきゃ…いけないんだな……。」

 

潤と2人で暮らすために買ったビルの一室。

2人のもので溢れた部屋。

 

潤をベッドに運び、荷物をまとめ、

 

ここを立ち去った。

 

 

そして今。

 

「……潤、昨日はごめんな。」

 

謝ろうと声をかけた。

座っていた潤が俺を見上げる。

 

潤「………別に…」

 

そしてすぐに目を伏せる。

 

「…痛かっただろ、本当にごめん。」

 

頭を下げて謝っても返事は来ない。

 

嫌われたんだ。

あんなことしたんだから、当たり前だ。

 

今にもこぼれそうな涙をぐっと堪え、

トイレへ逃げ込んだ。

 

「……あぁ………どうすればいいんだ……」

 

気の済むまで涙を流し、楽屋へ戻ろうとした。

 

廊下で話し声が聞こえる。

 

?「……ちゃんと言いましたね?」

 

潤「…言ったに決まってるでしょ、だからしょおくんのことはもう諦めて。」

 

?「…分かりましたよ、分かりました。」

 

潤「……データは全て消して。」

 

?「…はいはい、ほら、今から消しますよ、ほら。」

 

潤は、俺が誰か分からないやつと話をしていた。

 

そいつが見せたスマホの中の写真を遠くから見る。

 

 

その写真は俺と潤が

玄関のドアの前でキスしていた写真だった。

 

 

潤は脅されていたのか?

 

「おい、お前誰だよ。」

 

潤「しょおくんっ…!?」

 

記者「…記者ですよ〜」

 

「……何脅してんだ。…なんで潤だけを脅すんだ?

俺も脅せばいいんじゃないか?」

 

記者「…昨日、潤さんから言われたでしょ?」

 

「……は?」

 

昨日言われたことって、まさか………

 

記者「…別れないと記事にするって脅したんですよ〜。…潤さんはピュアだから脅しがいがありますよ…(笑)」

 

潤「……しょ…くん……ごめ………俺…っ」

 

潤は泣き、俺の左の袖を掴む。

 

「…潤………」

 

「…お前の目的はなんだ?脅す理由はなんだ?」

 

記者「…んー、潤さんが欲しかったから〜……ですかねぇ?」

 

潤が欲しいがために脅すなんてありえねえ。

 

「…………………潤はあげねぇ。」

 

潤「…え?」

 

「…俺のもんだから、お前にあげるわけねーだろ。記事にするならしろ。俺らなりに何とかする。」

 

潤「……それじゃしょおくんのイメージが…崩れちゃう……っ」

 

「…俺のイメージなんてどうでもいいんだよ。」

 

「……さあ、脅すなら脅せ。」

 

記者「……………。」

 

そいつは立ち去って行った。

 

消さずに帰っていったが、

本当に記事にするのか。

 

潤「…しょおくん……ほんとにごめんなさい……っ」

 

潤の顔は涙でぐちゃぐちゃだった。

 

「…昨日のは…嘘だったんだよな……?」

 

潤「…うんっ……俺の本当の彼氏は…しょおくんだから……っ」

 

さっきまで見れなかった笑顔を見せてくれた。

 

「……潤、殴ったり蹴ったりしてごめんな。

もうあんなことしない。改めて自分の短気さが分かったよ。」

 

潤「…俺だって……脅しに簡単にのらないようにする…。」

 

「ごめんな…潤…!」

 

思いっきり抱きしめた。

壊れるぐらいに。

 

もう潤を絶対離さないように。

 

潤「……しょおくん…っ」

 

人が通るかもしれない廊下で

数分ほど抱きしめあっていた。

 

楽屋に戻ると、泣いたせいか目が腫れていて

3人に心配されてしまった。

 

 

絶対に潤を悲しませない。

寂しくさせない。

 

俺が幸せにしてやるから。